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01 トルコ語との出会い
 トルコ語への憧れは大学のころ。チベット語と同じ時間に進められる授業は結局取れずじまいで、トルコ語を履修していた友人に教材のプリントをコピーしてもらっていました。
02 どんな言葉か
 トルコ語は膠着言語。つまり日本語や朝鮮語、満州語などとも同じような文法構造をもっている言語と言えます。これらの言葉は、ヨーロッパ言語を中心とした考え方で外国語に接している人にとっては新しい感覚であり、日本語の回路にとても近い状態のままに外国語を操ると言う実は面倒な作業を脳に強いるということが感覚として分からないと感じるかもしれ ません。
 トルコ語は以前はアラビア文字を採用していましたが歴史で有名なケマル・アタチュルク初代大統領がラテン文字への文字改革を断行、殆どの人が文字を読めるようになったとのこと。若干特殊な文字がありますがそれは無視して例文を挙げます。
Henuz guzel konusamiyorum,fakat ileride konusabilecegim.
まだうまく話せないが、将来は話せるようになるでしょう。
ポイントは動詞の部分で、話すkonus-に対して、
konus-a-mi-yor-um(動詞語幹-介入母音-否定-現在-一人称)
konus-abil-eceg-im(動詞語幹-可能-未来-一人称)
と言うようにいろんな要素がべたべたとくついていきます。この順番はどうでも言い訳ではなく、きちんと順番は決まっています。しかし、このような構成法はまさに慣れで、日本語や朝鮮語も 同様の構成法で動詞を表現しているのです。
 もう1つトルコ語で興味深いのは朝鮮語や古い日本語にもあった母音調和。母音調和をきちんと把握していないとどの母音の語尾を使うのかと言ったことが分からない。確かに発音してみると実際は発音しやすいものが正しい語尾と言う感じで、母音調和は口に出して言ってみると案外簡単かもしれません。
 また、イスラム圏であるということでアラビア語やペルシャ語からの借用語が多く、かなりの割合を占めているようです。辞書を眺めるとそれらの外来起源の単語にはその旨表示されています。
03 トルコで通じた
 エクスプレストルコ語を一通りあげて(終えて)、早速行った初めてのトルコは、期待と不安。しかし、片言ながらトルコ語を使うと、こいつは珍しい日本人だとばかりに人が来ます。
 本屋さんで簡単な小説はないのか、地図がほしいんだけど。と話し掛けると驚いた表情をしながらも丁寧に応じてくれて、いま一番人気の小説はこれだからと教えてくれました。他の本屋さんでは店のおやじと話をしていたら、君はトルコ語を勉強しているのならこれをプレゼントしようと言ってトルコの学校で使用している文法の簡単な本をいただきました。
 長距離バスのガイド(これが若い兄ちゃん)と片言しゃべり、休憩の時間にバスを降りても、何時に出発するのかをきいたりしてお友達になりました。出発の案内はトルコ語でしか行わないのです。トルコ語を勉強しておいてよかったと思いました。田舎のホテルでの値段交渉もトルコ語。田舎なのでとても親切です。
 2度目の旅行ではさらに地方都市を回り、バスを乗り継いで目指す地を巡りました。今は治安が悪いようですが、当時はとても安全で、楽しいばかりでした。
04 モスクワでの出来事
 トルコ語といえば、モスクワであった面白い話があります。
  モスクワのウズベク料理のお店に食事をしにいったときのことでした。いつものように、「ラグマン」やら「プロフ」やらを頼んで食べていたところ、私の横の席にロシア人でない明らかにトルコ系の親子が座りました。
 ロシア人女性のウエイトレスがやってきて何やら注文の話をしているのですが、ロシア人女性はロシア語しか分からないらしい。そしてこのトルコ系の親子はどうもロシア語が分からないらしい。メニューを間にああだこうだとやっているのです。そして、お茶の話に及ぶとお手上げになったようなのです。ロシア人はお茶はどの種類かを尋ねるのに、この親子は全然分からないようなのだ。
 まあ、トルコ語に似た言葉をしゃべっていたので、間に入って、この親子に「ウエイトレスはチャイは緑茶なのか紅茶なのか聞いてる」とトルコ語で尋ねると、その親子は「紅茶だ」とトルコ語系の言葉で返してきたので、ロシア語でウエイトレスにその旨話すと、良かったという表情で戻っていったのでした。私は気になったので、トルコ語で「タシケントから来たのですか」と尋ねると、何とその親子は「ウルムチから来た」と答えたのでした。 たぶんその親子はウズベク語でもトルコ語でもなくウイグル語で話したのだと思うのですが(本当にそうなのかは分かりませんが)トルコ語系の言葉はお互いに結構通じるものだなと思った、貴重な体験でした。