最初の満州語との出会いは大学の満州語の授業でした。満州語の世界的な権威、韓国の成百仁教授の授業は厳しくもやさしいものでした。文字の読みかた。簡単な文法と発音の仕方。ウイグル系の文字としてはやさしいほうではありますが、最初は子音の書き分けが難しいのです。
満州語の文法は形態論的にはそれほど複雑ではないがそれゆえに運用の面では大変であろうと思われます。いくつかの語尾があって、膠着語特有のくっつき方をします。 文字はウイグル系の文字なので、この手の文字に接したことがあれば割合すんなりと理解できると思わます。モンゴル語の縦文字は母音の特定を字面からはしにくいのですが、満州語は口語は別として、書面語では同じ形でも子音の書き方で母音が特定できる。逆にいうと、母音によって子音を微妙に書き換えるという点があり、慣れないと難しいのかもしれません。確かに私も最初は少々目食らいました。
面倒なのは朝鮮語などに比べると動詞の語尾がとても少なく、そのニュアンスを読みとるのはかなり読み込む必要があるのではと思います。
−mbiで終わる不定形の語尾
−haに代表される過去完結語尾
−fiに代表される未完結過去語尾。
これがもっとも頻繁に使われるのですが、その用途はとても多岐にわたっています。このことがかえって難しいともいえるのです。 格をあらわす語尾には次のものがあります。
−i(属格)--〜の
−de(処格、向格)、--〜に
−be(目的格)--〜を
−ci(奪格、比較格)--〜から、〜より
こちらもそれぞれ用法が多岐にわたり複雑になっています。
音声面ははっきり言って生の音を聞いたことがありません。ただし満州語の1つともいえるシボ(錫伯)語は録音テープを聞いたことがあります。そのテープのコピーは現在も手元にあります。実際成百仁教授も音声としてはシボ語に準拠してらしたと記憶しています。特にEの母音が暗い音で印象的です。この録音は台湾大学の教授でもう亡くなられたシボ族の方が生前に録音したもので、興味深いものがあります。その奥様の吹き込んだ古典の方はなれていないためにつっかえつっかえではあるもののゆっくりとそしてしっかりとした発音は大変興味深いのです。
03 満州語とシボ語事情
中国では近年満州語の研究が盛んのように見えます。「満語研究」などという雑誌が出ているほかに数種類の満州語文法解説や簡単な入門程度の書籍まで出ています。辞書もかなり大部のものが出版されました。しかし、あくまで生きた言語と言うよりは、過去の言語と言った意味合いが強いのです。
シボ語のほうは雑誌を始め各種の書籍がシボ語で出版されています。見た目が蒙古語に似ているので間違えやすいのですが、シボ族はほとんどが新疆ウイグル自治区などに住んでいるので大きく重なっていません。大きな特徴はこれらシボ語で書かれた書籍がいずれも活字ではなく「手でかかれている」点にあります。かなりの大部の書籍でさえ手書きが原則です。モンゴル語の書籍の活字を少しいじれば活字による印刷ができるのではないかと思われるのですが、今のところそのような書籍はありません。これは読者数というか購買数というかともかく本を買って読む人口が少なすぎるのが原因なのかもしれません。出版数は確かに700とか400と書かれています。雲南省などにいる少数民族でも活字で印刷物が出ているのだから活字化してもよさそうなものだと思うのですが。
04 蔵書(整理中)
●満語語法 愛新覚羅・烏拉熙春 内蒙古人民出版社
●満語語法 季永海ほか 民族出版社
●現代満語八百句 季永海 中央民族出版社
●満族古神話 愛新覚羅・烏拉熙春 内蒙古人民出版社
●錫伯語口語研究 李樹蘭 民族出版社
●錫伯族簡史 安俊ほか 新疆人民出版社(錫伯文)
●錫伯族民間故事2 新疆人民出版社(錫伯文)
●錫伯族民間故事3 新疆人民出版社(錫伯文)
●錫伯族民間故事4 新疆人民出版社(錫伯文)
●錫伯族民間故事5 新疆人民出版社(錫伯文)
●喀什(口葛)爾之歌 蘇徳善 新疆人民出版社(錫伯文)
●錫伯騎馬連紀実 新疆人民出版社(錫伯文)
●唐宋詞一百首 奇車善 新疆人民出版社
●文集 新疆人民出版社(錫伯文)
●満語読本 愛新覚羅・烏拉熙春編著 内蒙古人民出版社(追加)
●満語文教程 李澍田主編 吉林文史出版社(追加)
●満州語入門20講 津曲敏郎 大学書林(追加)
●満州語文語入門 河内良弘/清頼義三郎則府 京都大学学術出版会(追加)