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01 出会い
 中央アジアに位置する国々。私たちはこの地域の言葉というと何を思い浮かべるのでしょうか。ここには西域とかつて呼ばれた頃の名残を引く民族が今も行き続けています。一方で歴史のいたずらとでも言うのでしょうか。一風代わった言葉が残されていたりします。その一つが東干語です。

 ドンガン語とかジュンガン語などと呼ばれていますが、この言葉に出会ったのは知り合いの一人がこの言葉で書かれた新聞を購読し始めたためでした。それまでは名前と大雑把な知識でしかなかったものが実際に印刷された出版物を目の前にすると感激もひとしおです。

 それはいったいどんな言葉でしょうか。中央アジアという場所と考えると興味深いものがあります。

02 興味深い言葉
 東干語はキリル文字でかかれます。それは中央アジアの各少数言語がそうであるようにです。でもこの言語にもっとも近い言葉でキリル文字やましてやローマ字で書くものは殆どありません。それはなにかというと中国語なんです。

 東干語は中国語をキリル文字で表記する言語と思えば間違いないと思います。そんなことがあるのかという方もいらっしゃるでしょう。この言語を話す東干人?はお祭りになると女性たちはチャイナドレスで着飾るのです。そして漢字でこそ書かないもののその言葉は中国語そのものといえるのです。とはいっても中国語の方言のような感じでとても奇妙な感じを受けます。 まさに言葉好きには興味の尽きない言葉といえます。

03 どんな言葉か(1)
 東干語はキリル文字で書きますが、中国語の方言のような言語なので声調があります。でも、その声調は表記されません。標準中国語の第三声を抜いたような3種類で、同じ表記をしても声調で意味が変わるということが重要なポイントといえます。

 一部の文字はロシア語にはないものでeの逆さ、Уの上にЙの上の部分がついたような文字が追加されています。ロシア語で転写する時のように、Bは「ワ行」音を表現します。これらを表記できないので、eの逆さはEで、Уの上にЙの上の部分がついたような文字はUで表記することにします。

 人称代名詞を見てみましょう。

 第一人称単数 вE 複数 вEмU
 第二人称単数 ни 複数 нимU
 第三人称単数 та 複数 тамU

中国語をご存知であれば、なんとなくわかる感じがしませんか。мUは複数の指標ですね。最後の子音が落ちているのが興味深いところです。

「私の」という場合にはвEдиと「的」にあたる「ди」がつきます。「誰」は「сый」となります。