日経新聞によるとニュージーランドにマオリ語の公営テレビ局が始まるといいます。ニュージーランド政府が4年間は資金を援助して運営されるとのことです。
マオリ語はニュージーランドの先住民の言語でポリネシア諸語の一つであり、ハワイ語やフィジー語、タヒチ語、チャモロ語(グアムの先住民の言語)などとも親縁関係にあります。人口の14パーセントほどしかいないマオリ族は法律で保護されていますが、その言語も公用語に指定され教育現場で教えられています。
ニュースや文化、音楽といった内容の番組を作っていくということですが、そもそもマオリ語でどのように時事ニュースを表現するのかなど課題は山積でしょう。これまで出版物になっていなかったり、文学作品を生んでない言語が放送言語や文明を載せうる言語になるにはあらゆる事象を表現しうる言語、文学に耐える言語にならなくてはなりません。まさにその意味での試練であって、これを機会に文学言語になればそれはマオリ語にとって大きな出来事になるのではないかと思います。
ある言葉が方言か独立した言語かというのは実は政治に関わってきます。違いが方言差程度でも独立した言語と主張するとそれは独立した言語とすることがあります。チェコ語とスロバキア語、セルビア語とクロアチア語、ヒンディー語とウルドゥー語これらは大変よく似ています。互いにかなりの割合で意思が疎通するといいます。でもそれぞれが別の言語であると主張します。
一方で方言差が激しいものもあります。日本語でも青森の方言と沖縄の方言とを比べるとこれが一体同じ言語の方言なのだろうかと思うほどに違っています。日本語は多くの方言は母音が5つありますが、沖縄方言では母音は3つ。それだけではありません。「づ」と「ず」「ぢ 」と「じ」の発音を区別したりとバラエティーに富んでいます。沖縄が待った区別の独立国だったら、沖縄方言は琉球語として独立した言語になるのかもしれません。
漢字の特徴は表音文字であり表意文字であるということ。まあ、ヒエログリフや西夏文字も同様の特徴がありますが、その特徴から略語でも意味がわかる場合があるとか、漢字1文字でも意味を伝えられることなどがアルファベットとは違うと言うことでしょうか。ハングルは一部が表音でありながら表意文字的ニュアンスを持つものがあり、ベトナム語のようにラテン文字にしてしまったところとは少し違うのかもしれません。
いずれにしても韓国でもベトナムでも漢字の復権が叫ばれるようになりました。韓国はワールドカップを前に観光客が最も多い日本と中国系のために漢字の標識を導入しました。共通文化遺産として漢字は大切にしたいものです。
先日電車の中で、35才前後の女性が二人で話をしているのを偶然聞いていると、そのうちの一人が「その花は、きちんと水さえやっていれば大丈夫いからね。」といっているのでした。これにはちょっと驚きました。
全体の発言からは特段方言的なものは感じられなかったのですが、方言でないとすると興味深いものがあります。 普通は「大丈夫」は形容動詞として用いることはしますが形容詞として用いることはしないのです。一般に漢字語は形容詞として用いることはほとんどないのです。以前「ナウい」という形容詞が巷をにぎわせたことがあります。これも外来語を形容詞的に使う方法で、実は形容動詞ではなく形容詞にするとより国語化したというニュアンスがでてくるのです。漢字語で形容詞として用いているのは「黄色い」、「茶色い」という言葉があります。「赤い」「青い」「黒い」「白い」ときて「黄い」ではなく「黄色い」、「茶い」ではなく「茶色い」なのです。なぜこれらが形容詞として使われるようになったのか、「色」という言葉が後ろについたままなのか、この辺も興味があります。
「大丈夫」という言葉を形容詞として使った彼女はより近しいものとして扱ったと考えるのが妥当なのかもしれません。ある形容動詞を形容詞として使っていく人が増えて、認知されると、新しい使い方が定着するのでしょう。果たしてこの言葉は定着するでしょうか。
中東情勢がニュースに頻繁にのるようになると気になるのがアラビア語の固有名詞のカタカナ表記です。
アラビア語にも定冠詞があります。でもその定冠詞はヨーロッパの多くの言語が持つ定冠詞とは異なって、人名から地名にいたるまであらゆるところにでてきます。「al-」と書かれるもので、英語にもそのまま入り込んだものもあります。問題は2つあります。
ひとつはいたるところに出てくる定冠詞をそのままカタカナで表記してしまうのか。地名にはほとんどが付いて、名前にもついてきます。これを全部カタカナで表記していると固有名詞が頻繁に出てくるような場合にはわずらわしいことこの上ないのです。
もうひとつはアラビア語の特徴である太陽文字の問題。太陽文字と言うのは文字を2種類に分けて、そのひとつを太陽文字と呼びますが、太陽文字で始まる単語では定冠詞が付くと先ほどの「al-」の後ろの「l」が同化してその太陽文字と同じ音になると言う規則があります。イラクのミサイルが「アルサムード」ではなく「アッサムード」なのはそうした理由からです。
この二つの理由から果たしてどこまでこの定冠詞をカタカナで表記していったらいいのかはマスコミとしては悩みの種になるわけです。新聞協会がいちいち表記を決めるわけには行きません。それぞれの判断に任されることになるわけです。その結果マスコミによって名前が違ってくると言うわけです。
このほか、イラクでは人名で「サーディ」「サアディ」の違いや、「ナシリヤ」「ナシリーヤ」、「ティクリート」「ティクリット」と表記の混乱はかなりあるようです。実はミサイルの名前では英語で「アルサムード」と発音することからそちらに引っ張られたと言ういきさつがあります。しかしアラビア語の固有名詞を英語読みすることに何ら意味を持たないのでアラビア語読みの「アッサムード」に集約されていきました。
外国語のカタカナ表記と言うのは難しいのですが、表記するしかないわけでそれが悩みの種なのです。