さてこの辺りでちょっと文法の記述、もしくは解析方法について触れたいと思います。幾つかの複数の文法書を御覧になった方のなかには気づかれた方もいらっしゃるかと思います。文法を特に用言の活用について説明する方法には大きくわけて二種類あります。その基準が介入母音をいかに表現するかということが最大の分かれ目になってきます。
子音で終わる動詞、例えば「食べる(meog-da)」に例えば「-myeon」という要素が接続することを考えます。
1 韓国の伝統的な文法をもとにした方法 主に大阪外語大、天理大が採用
「meog-」に「-eu-meon」がつくとして、前の語幹が子音で終わる音節の後のときと、母音で終わる音節の後では接続語尾の形が異なると考えます。つまり介入母音は後ろの要素にくっつくと考えます。「meog-eo-ss-da」というときの「-eo-ss-da」は前の語幹の母音が陽母音と陰母音で2種類考えますがそれは語尾のほうのバリエーションと見ます。前の語幹の母音が陽母音か陰母音かを見極めながらバリエーション中から選ぶというわけです。「-eu-」がつくかつかないかも単語ごとに語尾を考えるという方法です。
2 河野六郎博士が考案したとされる語基の概念を取り入れた方法 東京外大が採用
「meog-eu-」という形を考え、「-myeon」は変化しない。つまり介入母音は前の語幹の後ろにつけこのように「-eu-」が語幹のつく形を「第II語基(だいにごき)」と呼び、語幹だけのものを「第I語基(だいいちごき)」と呼び、更に「meog-eo-ss-da」というときの「meog-eo-」を「第III語基(だいさんごき)」と呼ぶ。
つまり「-myeon」は「第II語基」に接続し、「-ss-da」は「第III語基」に接続すると解釈するのです。この場合「-ss-da」はバリエーションはなく、語幹が陽母音と陰母音でその単語ごとに決まった語基を持つので単語ごとに覚えれば済みます。単語ごとの語基を覚えてその後ろにバリエーションを持たない語尾をつけるというわけです。
動詞は「meog-、meog-eu-、meog-eo-」と覚え、「II-myeon」と語尾を覚えるというわけです。日本語の動詞のこれは未然形につくとか、これは連体形につくといった感覚に近いかもしれません。
韓国の大学では必ず1の方法で議論するので2の方法になれてしまった私は留学当時苦労した記憶があります。どちらが絶対というわけではありませんが、覚えやすいほうを採用するのが良いかと思いますが、私は2が理解しやすいのでこのホームページで表記するときには語基の考えを採用することにします。
そういえば日本語でも我々は学校文法といって未然連用終止連体仮定命令と唱えて、五段活用だとか上一段活用等と覚えましたが、外国人に教える文法はちょっと違っているのをご存知でしょうか。学校文法は日本語を母語とする人には都合の良い分析方法だったのでしょうが、外国語として学ぶ文法としては不都合があると思われるのでしょう。朝鮮語の文法の考え方も同じかもしれません。そういえば韓国の大学の文法の授業で、日本では語基の考え方で分析する方法を唱える人がいるがそれが如何に誤っているかということを力説される先生がいらしたことを思い出します。