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046 春は名のみの

 節分が過ぎて暦の上では春になりましたが、まだまだ寒さが続きます。週末は特に冷え込んで、風も冷たくまさに「早春賦」の一節「春は名のみの風の寒さや」を思い出すようです。

 暦の上で春になったとはいってもまだまだ寒い日が続いていますが、それがまさに三寒四温、暖かい日が来たり、またちょっと冷えたりを繰り返して徐々に陽気がよくなっていくのです。春をいち早く感じる梅はもう咲いているし、寒い冬があってこそ暖かい春が待ち遠しく、陽光のありがたさを感じられるのかもしれません。温かくなったなあと思っていると、ちょっと急に寒くなるのもその期待をいやがうえにも高めてくれるような気がします。

 そんな季節の移り変わりに敏感になりたいものです。最近は「たらの芽」も一年中店頭に並んでいて不気味でさえあり、しかもそれはたらの芽とは思えない形と色なのです。まもなく本物のたらの芽が山で採れるので待ち遠しい限りです。そしてふきのとうや菜の花などほかの春の山菜や春野菜も出回り始めるのです。素晴らしい恵みです。

 節分が過ぎると寒い北風が吹いてももう長続きすることはありません。春の気圧配置が天気図に現れ始め、一日一日が春に向かって歩んでいるのです。そんな中で、季節感を感じる機会が減った都会では、一層敏感なアンテナを張っていないと季節という自然からの大切な恵みを感じずに過ごしてしまいそうです。ああ、いつのまにか季節が変わったなというよりも、いち早く季節の変わり目を感じたいものです。いつも通る道沿いの庭にある花のつぼみが膨らんできたこと、八百屋さんの店頭の品揃えが変わったこと、街路樹の下の植木の花が植え替えられていること、そんな小さなことを発見しただけでも嬉しいものです。

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