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036 「神」

 日本でもそうですが、西洋からキリスト教が入ってくる前から「神」という言葉がありました。このこ言葉はアイヌ語の「カムイ」や朝鮮語の「コム」といった言葉と比較されてかなり古い言葉と言えるものです。日本語では「八百万の神」であって、そういった中に西洋から「God」という概念が入ってきました。はたしてこの概念は如何に日本語に受け入れられたのでしょうか。日本の古い聖書の翻訳では「カシコキモノ」という表現が出てきます。旧約聖書の創世記のくだりです。日本語の「神」という言葉の概念とは異なるものにこの「神」という言葉をあてるのは最初は抵抗があったのでしょう。

 しかし結局は「神」という言葉をあてるようになりました。他にうまい言葉が見つからなかったのでしょう。すでに定着していますのでいまさらうまい訳を見つけても簡単には変えられないでしょうね。

 朝鮮語では「ハヌニム」という言葉があります。これは「ハヌル(天)」と「ニム(敬称)」とを合成した言葉で、旧来の朝鮮の神もこれをあてます。朝鮮半島にキリスト教が伝来したのは日本より古く、カトリックでは「神」の訳語としてこの「ハヌニム」と言う言葉を使いました。ところが韓国のプロテスタント系のキリスト教は「神」の訳語として「ハナニム」という言葉を使用しています。もともと「ハヌニム」の2番目の母音はアレアと呼ばれる特殊な母音で、「ア」に近い発音をします。中期朝鮮語でこの音を持つ言葉は現代語では「ア」か「ウ」になるので「ハナニム」ともなりうるわけですが、さらに大きいのは「ハナ」という言葉が「一つ」を表わしうるということです。つまり「唯一神」的なニュアンスを付加できるのです。

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