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005 ナクチの足は何本

 「ナクチ」というと南では「いいだこ」のことを指しています。大きな蛸は「ムノ(文魚)」と呼ばれています。日本語でも若干名前が異なりますが、韓国でもそれを呼び分けます。ナクチはやはり、生きたままその足を食べるのが格別ですが、あたまからすべて食べることもできるようです。足の活き造りはくねくねと動く足を塩と胡麻油を混ぜたものにつけて食べます。

 さて、平壌で「ナクチ」と言うと果たして何を指すのかと言うと、実は足の数が違うものを指します。そう、イカなのです。イカは足が10本。(当たり前だって?)平壌で出版されている辞書を見てみると確かに「ナクチ」の項目にはイカとしか思えない表現がなされています。

 では南でイカを意味する「オジゴ」と言う言葉はあるのだろうかと言うと、辞書には載っているものの平壌の人に聞くと、殆どの人は知りません。どうしてこんなことが起きたのかは詳しくはわかりませんが、思うに南の標準語の基準がソウルであるのに対して、北は平壌の言葉を基準にしています。ひょっとするとこのあたりに鍵が隠されているのかもしれません。

 南と北では言葉が殆ど通じるものの、時々このような「ずれ」があります。またまったく異なる表現や単語も数多くあります。体制の違い、基準の違い、そして北の場合には単語の整理を人為的に行ったため新しい単語をたくさん作り出しました。

 そのような単語が表現が南北の人々の意思の疎通を妨げようとしています。それらを乗り越えて、共通の言葉を作り上げていく、そんな努力も始まっていると聞きます。

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