マジンガーZ・マンガ版(その3)
『マジンガー』の名を持つ作品たち


ゴッドマジンガー(1984)

単行本は何種かあるが、これは中央公論社から出た愛蔵版。全1巻というのが手頃。

1984年5月から全4巻描き下ろしという形式で発表された作品。同時進行で東京ムービー新社(現トムス・エンタテインメント)によってアニメ版が並行して作られた。「マジンガー」というビッグネームを冠した作品だったが、『マジンガーZ』が東映動画製作ということもあり、時空を越え幻のムー大陸で恐竜軍団と戦う、全く別の異世界ファンタジーとして描かれた。

従って「スーパーロボット」というロボットモノ括りには納まらない作品。ただ、少年が異界からの呼びかけで召還され、ヒロイックファンタジー世界で活躍するというモチーフは、豪ちゃん本来の作風で、類似のプロットが散見される。例えば『怪傑ウルトラスーパーデラックスマン』(1970)『豪ちゃんの夏休み』(1975)『ゲーム戦士アニマード』(1991)『魔界の剣』(1997)などデビュー付近から比較的最近まで見られる。

以降の豪ちゃんが描く「マジンガー」は大なり小なり、このモチーフに乗っ取っていると言ってもいいだろう。

作画に関しては、永井豪をメインとして石川賢、安田達矢といったダイナミックプロ総掛かり戦。コラボレーション的にストーリーを展開させたわけだが、「全4巻」という分量的制約から、ラスト付近がいささか駆け足に見えるのは残念。

オリジナルは小学館・てんとう虫コミックス。続いて角川書店ヤマトコミックスから加筆され『魔神伝説』のタイトルで出たが、中央公論社愛蔵版にて元のタイトルに戻り、大都社から再発されたのが今のところ最後。


MAZINGER U.S.A. Version(1988)

これはアメリカ・トレヴィル社の「First Publishing」1988年12月号に発表された、別のマジンガー。この画像は、1999年2月26日初版発行のB4判とでっかい単行本(このバージョンのみepic社に発表の『鬼 ONI』併録)。他にも、対訳版のハードカバーが存在する。

こちらのストーリーも異世界ファンタジー。マジンガーとほぼ身長が同じ、巨人の国に地球からトリップした主人公キャプテン・カブトはクリシュナ姫のために戦う...といったお話。オールカラーで絵として見応えアリ。

デザイン的にはこのマジンガーが、『マジンサーガ』のZやスパロボのマジンカイザーに繋がったのだろうか。


マジンサーガ(1991)

元々は「週刊ヤングジャンプ」「ベアーズクラブ」と描き継がれ、集英社から3巻まで発売された。現在はこの画像のバージョン、扶桑社より1〜6巻まで。「以下続刊」とは謳われているが、2001年7月現在続きがいつでるのか全く不明。

主役は兜甲児。人類が知り得る最後の物質、超精神物質"Z"で作られた鎧を身につけ、神か悪魔か...という力を得る。その変身した姿は、「マジンガーZ」と呼ばれる。『バイオレンスジャック』に続いて、豪ちゃんキャラのクロスオーバー作品。ただし、こちらは今のところ、マジンガー系統と『凄ノ王』の引用がメイン。

実際にストーリーにも断片がかいま見える。恋人を陵辱され、怒りに身を任せたZが地球を破壊するところは『凄ノ王』をトレースしているようだが、むしろストーリーはそこから始まる。悔恨とともに時を越え、戦乱渦巻く未来の火星で以後は展開。さやかや剣鉄也、デューク・フリード、ボス・ヌケ・ムチャの3人組などが、新たな役割を持ってストーリーに絡む。合田とのボクシング対決も『凄ノ王』。この先デビルマンも出てくる、と豪ちゃんインタビューで語っておられるが、果たして...?

フリーキーなモノが闊歩するフロンティア・火星というファンタジーへの手続きは、連載当時公開された映画『トータル・リコール』も思い浮かべてしまう。


Zマジンガー(1998)

類似するこの作品が描かれた影響で、『マジンサーガ』の続行は一時凍結された。こちらは古代遺跡から発掘された謎のロボットがマジンガー。もう一度平成的視点で『マジンガーZ』そのものを見つめなおしたスタイル。旧作と同じく学生の兜甲児始め、さやか、ボス。自衛隊員として鉄也、ジュンらも出る。スクランダーというイベントも含め、今日的に成長するロボットとしてのZがアレンジされている。茶髪の甲児に賛否両論。講談社「マガジンSPECIAL」にて2年に渡る連載で、単行本は全5巻。

こちらはZも敵も宇宙でいつ果てるとも知れぬ闘いをしている「神々」という設定。ギリシャ神話がベースになっている。Zの意志は死ぬが、そのボディを地球科学で受け継ぎ、闘いを託された甲児が神々に挑む。

『サーガ』がグレートマジンガーのデザインをも含んで、エングレーブされた装飾品的デザインになったのに対して、こちらはシルエットは変えずに線を増やしてみた、という印象。


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