デビルマン鑑賞。
ちゃらっちゃちゃちゃー どん じゃじゃじゃじゃーん♪
1972年10月7日放送
＃13「誇り高き マーメイム」
演出・鈴木 実(勝間田具治） 脚本・辻 真先 作画監督・小松原一男 美術監督・辻 忠直
ミキ「ドサクサにまぎれてナニをしようっての?!」
次なる刺客は誇り高き妖獣・マーメイム。ゼノンからザンニンとの共闘を
命じられるが、プライドの高いマーメイムはザンニンを足止めして
単身デビルマン攻略へと乗り出す。
海岸をドライブしている牧村一家と明。だが、それを知ったマーメイムが
高波を起こし、海へ引きずり込む。
明とミキが目を覚ますと、そこは巨大な真珠貝の中だった。真珠と化した魚。
ポタリ、ポタリと天井から垂れる液。このままでは人間真珠と化してしまう。
マーメイムの哄笑が聞こえる。他に閉じ込めた牧村一家共々
真珠になるがいい、と。そしてマーメイムは人間界へ。
脱出しようとあがく明だったが、人間体では歯が立たない。変身したいが、
ミキの目の前では…そこへ貝に寄生している巨大イソギンチャクがミキを
襲う。激しく締め付けられ失神するミキ。明は変身、貝柱を切り裂き、
脱出に成功する。
人間界はマーメイムの起こした洪水で大混乱だった。そこへ駆けつけた
デビルマンは、牧村一家の居所を吐かせようとマーメイムに迫る。
断るマーメイムは、水を自在に操る杖で襲い掛かる。デビルマンは気絶する。
勝利の確信と共に、デビルマン共々一家を殺そうと、もう一つの真珠貝
のところへ。
一方、ザンニンは、マーメイムの結界を解き人間界へようやく向かう。
牧村家を閉じ込めた界のところへ着いたマーメイムとデビルマン。
そこでデビルマンが目を開く。「案内ご苦労」このためにデビルマンは
倒された振りをしていたのだ。牧村一家を助け、怒るデビルマンは
マーメームを激しく攻撃する。水を自在に使う杖を破壊され、
ウミウシの本性を現したマーメイムだったが、デビルアローにとどめを
刺されて絶命する。
しかし、ザンニンがミキを置いた海岸へ迫っていた。安心して
牧村一家を助けているデビルマンの知らぬところで、ミキに
迫るザンニン。ミキは崖から転がり落とされる。だが間もなく来るだろう
デビルマンとの戦いの予感に喜ぶザンニンは、そこで手を止め、去っていった。
明が駆けつけたが、ミキは重傷を負って意識を失う。「俺が目を離した
ばっかりに…」デビルマンは怒る。
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のっけからラストの話をするのもなんだが、この回から、エンディングが お馴染みのイヤモン＆ラフレールインサートバージョンに変更。次回予告 と合わせて考えると、製作が遅れ、予告の尺が間に合わなかったための処置 だったんじゃないかなー、などと邪推したり。 それはさておき本編だが、小松原班の作画はさすがの安定度。勝間田具治の ヨリヒキのメリハリが利いたカット割と相まって、全編作画の乱れが まったく気にならない。それと後に『マジンガーZ』にて、富士山をモチーフ にした光子力研究所の名デザインや、プールを使ったZの出撃など、 プロダクションデザインとして単なる美術の枠を越えた仕事を見せつける 辻 忠直氏が豪ちゃん作品に初参加。 さてそんな中、前回も書いた「嫌いな上司No.1」の魔将軍ザンニン、今回も イイ嫌われっぷりです。冒頭、氷柱がボキっと折れて、「堪忍袋の緒が切れ ましたよ演出」の小技を見せつつ、ゼノンがマーメイムに出撃を命じる。
マーメイム「大海に投げた槍は外れても、デビルに投げた槍は外しませぬ」 って、そこまで嫌わなくても…と思うが、彼女は非常に「女だから一人前扱い されない」ことに怒りを覚える性質らしい。さすがは貝殻水着第一号さんだ！ で、マニア間ではお馴染みの、例のセリフになる。 「畏れながら女なれど、怒涛は揺りかご、海鳴りは子守唄。 潮の音を肌に聞きとめて育ったこのマーメイム、デビルマンがいかにあがいても 水の中ではこの私に勝てませぬ!」 演歌の口上みてえだな（笑） で、杖で水流ドリルを巻き起こし、地中をも突き進むというカマシで 人間界へ。このヒト、やるコトが一々大味だね。 がんばれザンニン。 ザンニン、ゼノンの知らせを受けて律儀にもマーメイムの到着を待つが、 「遅い！…マーメイムごときの力を借りずとも…」なーんて ブツブツ独り言を言ったがためにひどい目に合わされてしまう。ああ、ザンニン。
しっかりその一人ごちたのを聞いたマーメイム、ザンニンの足元を
すくって転ばせるという陰険な技を出し、しかも滝に変身して姿をくらました
かと思うと、「雨の檻」なる結界にザンニンを閉じ込め、一人戦いへ。
哀れザンニンは、同じところを雲に乗ってくるくる回るハメに。 （とはいえ、コレが後々効いて来るわけだけども） 明「スリルとスピードは青春につきものだよ!」 なーんてなコト言いながら、海岸通りのドライブを楽しむ牧村一家の クルマと明・ミキのタンデムバイク。それを見ていたマーメイムさん が収まるわけはない。どうもこのヒト、当時の急進的ウーマン・リブの闘士 をおちょくってるように見えるのだが、穿ちすぎか? で、岩陰から首だけ出して見守っていたマーメイム、パチンと弾けて 流動化、ドロドロっと下に溶けて流れる…という1カットが地味ながらステキ。 予告編にも使われてるくらいだから、結構考えて絵作りしたんだと思う。 妙にタイミングがいいんだよな。 タイミングがいいといえば、今回は非常にカットの秒数割が気持ち良くて、 編集もイイ。中でも、地味ながら非常にハマってるな、というかうまいなあ と素直に感心するのが、真珠貝の中でワカサギのテンプラのような魚真珠 を見つけたすぐ後の、しずくのサスペンス。ポタン、ポタンと垂れる 一滴一滴を受けるリアクションが絶妙のタイミングで恐怖を盛り上げる。
明の鼻と手にしずくが垂れ、「俺の指が真珠に…！」と見せておいて、
それを受けるミキの反応。 今回の密かな（でもないか）名シーン。 前半は真珠貝に 閉じ込められた明とミキが人間真珠にされるってサスペンスなんだけど、 ココ、明らかにこの時間帯のお色気対策のような趣がある。 ミキの前では変身できない。でもだからと言って何もしないでは死んで しまう。で、苦闘する明だけど、貝の口は堅い、と。万策尽きた明だが… で以下のやり取り。
明 「なんだよ、そのツラは！心配しなくても俺がちゃんと助けてやらあ!」 で、ココで両者のクローズアップ切り返し。（勝間田っぽいホントのアップ）
明 「なんだよ、俺が信じられないのかい?」
明 「（2S）ハッ!そう来なくっちゃ。 ミキでなくとも、いきなりナニを言い出すんだ、コイツ！である。 でクローズアップでじりじりと近寄る明と、じりじり後ずさるミキの 切り返し。ココは完全にシリアスだから起こるギャグシーンと言っても 差し支えあるまい、うん。 結局、ミキの背後にいたイソギンチャク（人間大）が襲い掛かり、 ミキが気絶したお陰で、脱出できるわけなんだが。余談ながら、 このイソギンチャクは貝に寄生してるデーモンなのかな？ 貝柱を断ち切る描写が痛そう。しかしココにすぐ思い至らないところ見ると、 明はあんまり貝を食ったコトがないのかもしれない。 さて、後半戦。 街はすっかりマーメイムのために大洪水。そこへ駆けつけた デビルマンだが、まったく洪水を意に介さず「おじさんたちを返せ！」と やるのがステキだ。このヒトつくづく、人類対デーモンには興味がない らしい。で、自分に不利な水の中に引きずり込まれたデビルマンは、気絶した振りを してマーメイムの虜になる。で、上機嫌のマーメイム、牧村一家共々 殺そうと、まんまとデビルマンを貝のところへ持ってきてしまう。 （このシーンの熱帯魚が妙にかわいい。『キテレツ大百科』の丹内司氏だろうか、 根拠なく）そこでニヤリと 立ち上がったデビルマン、吐いたセリフがまたステキ！ デビルマン「案内、ご苦労」 ああ、もうたまらんですよ、俺が女なら結婚したいですぅ。加えて 高笑いしながら、 デビルマン「騙されるより騙すヤツになれというのがデーモンの教えだぜ」 さすが、デーモン族の勇者である。 マーメイム戦は映像的にはバラエティに富んでいる。やはり次回に魔将軍との 決戦を控え、前哨戦との意味合いが強かったのかも知れない。杖を駆使しての 戦いの後、両者跳び上がり、空中で杖対デビルチョップ。ココのキマリ絵も 剣豪モノっぽい止めの多用でメリハリを利かせている。 たまらず逃げ出すマーメイム。皮肉たっぷりに罵声を浴びせるデビルマン。 「見苦しいぞ！それが誇り高きマーメイムの姿か！」…なんて、このヒト デーモン界でも嫌われていたのかもしれない（笑）よほど口の悪い 自信家だったんでしょうね。 アメーバ（脚本上「ウミウシ」らしい）の本性を現す。ぷかぷか浮いてる だけかと見せて、デビルマンが降り立つと波打ち、触手が攻めてくると いう気色悪さ。 決め手はデビルアロー、なんだがどうも映像上はデビルビームですね。 ラストに仕掛けられた罠。 で、いつも通り終わるのかな、というところで引っかけ。 砂浜に眠るミキの足元からパンナップ（その顔に掛かる影はザンニン）。 …と気付くか気づかないか、というところで太陽を背にした明のバスト ショットへ。ああ良かった…？と思いきや、明が介抱していたのは 牧村のおじさん。他の二人も弱っているが大丈夫、なんてノンキにやっている。 まあ基本といえば基本の「そらし」のテクである。
で、ミキにはザンニンが迫る。「明クン助けて！」 ま、幸いというべきか、ザンニンは手を下さず、ミキが崖から転がり落ちる ことで切り裂かれずには済む。もうザンニンはデビルマン憎し、というか 勇者を地に叩きつけることしか考えていないのだな。溜まりに溜まった 管理職の現場に出られぬ不満というか。 で、違うだろそれ！という安堵の曲が流れる中、非常にシリアスな状況が展開する。 重傷で瀕死のミキ、明は安堵できない。出来ないどころか出来ることなら 自分の命と引き換えに…と祈って終わる。まあBGMだけ聞いてると、 来週はまたピンピンしたミキが出てくるんだろ、と１話完結に慣れている 当時の視聴者は、思っただろう。 が！続く予告編でどん底に突き落とされることとなる！ 予告編はBGMもなく救急車が疾走するところからスタート。 包帯で頭部を覆った痛々しげなミキ、それを複雑な思いで見守る明。 ひたすら明の独白で展開される。
「ちきしょう…ちきしょう…俺はお前の流した血に誓うぜ。 かつて闘ったデーモンが幾つか挿入、手術台のミキ。
「ミキよ、俺は約束するよ…俺はデーモンの国へ行く。 もう凄いっすよ、お題目だけの正義じゃない、明の心の叫び。 「ぶち殺す」だの「みなごろし」だの早々普通生きてて出てくるセリフじゃ ないもんね。 ミキと二度と会わない、とまで誓ってヒマラヤへ向かう 明の予告編。11話のラフレール、12話のアギュラー、今回のマーメイム とデビルマンがいるコトでミキが巻き込まれ被害を受ける、という展開。 一方で、ラストに必ずミキと絡めて、デビルマンの必死の防戦も明らかに している。ここで分かるのは、デビルマン明自身も、そのことに気付かざるを 得ない、というシリアスな展開。ミキを愛する故に、傍にいると被害が及ぶと いうジレンマである。 恐らく、一月かけて、じわじわと明を追い詰める構成が成されていたのだろう。 …といったところで、いよいよ次回は「氷の国への挑戦」だっ！ |