デビルマン鑑賞。
ちゃー ずーん たらたらたらたら ちゃーん♪


1973年7月18日公開
「マジンガーZ対デビルマン」
演出・勝間田具治 脚本・高久 進 作画監督・角田紘一 美術監督・浦田又治

シレーヌ「美しい月よ、そなたはこれから起こることを見ない方がいい」

今日も光子力研究所、そしてマジンガーZはDr.ヘルの機械獣と激しい戦いを 繰り返している。そしてまた辛くも機械獣軍団を倒した甲児とさやか。だが この日は二人の耳に不吉な笑い声が聞こえたのだった。

不吉な笑い声、それはデーモン族の妖獣・マダムシレーヌの復活の哄笑 である。街を破壊し、人々を傷つけ、飛び去るシレーヌ。それを見つけ 見上げる男・不動明。明はデビルマンに変身、シレーヌを追う。

デーモン族実在をあしゅらの報で知ったDr.ヘルは万能要塞ナバローンで デーモンが眠る氷の世界・ヒマラヤに向かう。誇り高きデーモンの世界を! と怒り襲い来るシレーヌだが、ヘルの攻撃にひるむ。そこでヘルはデーモン を操るテレパシー装置をザンニン、シレーヌ、ブゴに取り付け、自らの支配下に 置いた。それを見ていたのは…デビルマン。

研究所へ帰る甲児たちの前で、明は甲児にケンカを挑む。バイクでの激しい 勝負の末、互いの実力を認め合った二人だが、明はZには弱点があるという。 「俺ならマジンガーZを空から攻めるね」

研究所に帰った甲児は弓教授から、その弱点をカバーする新兵器・ ジェットスクランダーの完成を知らされる。喜ぶ甲児たちだったが、 その一部始終を妖獣ブゴが聞いていたのだった。

シレーヌとブゴがジェットスクランダー破壊工作に出た。ブゴの触手 攻撃で身動きが取れない甲児たち。さやかとシローはシレーヌにさらわれて しまう。だがそこへデビルマンが現れ、二人を救い出す。後を追ってきた 甲児は明にデビルマンの謎を聞こうとする。そこへ逃げるブゴの姿が。 明は甲児の目の前で変身、後を追う。全てを知った甲児。

海中に逃げたブゴの前に機械獣バルバドスF7が現れる。思わぬ敵にデビル マンは囚われてしまう。が、そこへ、マジンガーZが登場、デビルマンを 助け出す。明は「やさしいふるさと…美しい愛と限りない希望と夢」が ある人間界を救おう、と改めて甲児と共に戦うことを誓う。

ついにヘルは空飛ぶ機械獣とデーモン族を主軸に、総攻撃をかけてくる。 地上ではマジンガーZ、空中ではデビルマンが迎え撃つ。激しい戦いの中、 デビルマンは妖獣たちに捕らえられ、拷問を受ける。マジンガーZは機械獣軍団 を倒したものの、空で責め苦を負うデビルマンの声しか聞くことが出来ない。 「今スクランダーを出してくれなかったら、オレは一生教授を恨みます」 甲児の悲壮な説得に、テストなしでスクランダーは発射!マジンガーZが ついに空へ羽ばたいたのだ!

デビルマンを一方的に攻めるデーモン族を倒し、ヘルの要塞ナバローン も打ち落とす。甲児と明は互いにエールを贈り、それぞれの戦いへと 戻って行くのだった。

異業種タッグマッチ第一弾、コレがなければゲーム「スーパーロボット大戦」 もなかったかもしれない、偉大なるパイオニアである。つくづく良く思いつい たなあ、というのが感想ですな。これほど世界観が異なる作品を組み合わせよ うというのが、驚異的。

まあ、「デビルマン」的にはどーなんだというと、前半は甲児に悪口叩いたり、 Zの弱点をビシッと指摘するだけして去ってみたりと、アレだけケレン味たっぷ りに活躍する割には、後半はスクランダー登場のキッカケにされるばかりで、 デーモンどもにボコボコにされてるだけ、という哀しさもあるにはある。

まあそれもお化け番組『マジンガーZ』の人気、そして新兵器登場という目的 ゆえに致し方なしなんですが。『デビルマン』も当時は終了した番組、なワケだし。 一方で作画上は、Zの方は角田作画監督のタッチがこなれてない分フォルム自体は 今一つのカットが多く、本家本元・小松原氏も参入しているデビルマンの作画は シネスコの画面作りとも相まって、久々の活躍に見合うクオリティを保っていて デビルマンに分があったりする。

作画上で更に言うと…

劇場の大スクリーンそしてシネスコという横幅のサイズ をとにかく生かそうと、全編通じて「奥行き感」が非常に強調された画面設計 が素晴らしい。特に冒頭の光子力研究所、指令を出す弓教授の奥を研究所員、 (コレがまた豆粒みたいに小さいけど)みたいなテレビでは出来ない凝った 仕掛けを見せている。

蘇ったシレーヌが街を襲う一連でも、ビルに覆い被さるように空に現れる シレーヌの絵で、ビル群が魚眼レンズで撮ったように、手前から奥へパース がかかっているという一枚絵がステキだ。戦闘シーンでも、トロスD7に高々と 突き上げられるZの絵は、手前に大きく描かれたトロスと、奥に角よりも小さく 描かれるZの対比がいかにも。

最終戦の通称「戦闘雲」にもご注目。テレビシリーズでは弧を描くような本作のような 描かれ方は滅多にしていない。これも広角か魚眼レンズの広がりと歪みを 意識した実写的な作りである。

特筆すべ きは、ゴーストアームV10の鎖を使ったアクションの一連など、今ならカット を割って背景を引いて流してしまうところを、奥行き感を最大限に生かした 3カットで描ききっていて東映動画の底力を感じさせる。

この1カットの中にどのくらい「動き」という情報量を詰め込めるか、てのが 「動画=アニメーション」の本当の質なんであって、実写畑出身の勝間田監督 ならでは、引いてはそういった演出が心がけられていた劇場映画主体時代の 東映動画スタッフならでは、のこだわりである。テレビ版でもその空気が 残ってはいるものの、主にスケジュール的制約からそういう設計が少ないだけに、 劇場版たる意義を醸していると言えよう。例をあげれば暇がないが、 最終戦で、ミサイルを受けたZがふらつきながら、着弾したところに煙が細かく 流れているところの繊細な作画、なんてのはたまりませんわ。

また、勝間田監督の手法なのか、キャラクターの頭とアゴの切れるような 超アップを入れて語らせるというカットがあるが、これも本来、引きの絵が良く 動いていればいるほど、落差で生きるカットなのだと気付かされる。

勝間田手法としてはもう一つ。1話で超アップの明とミキが話す時に、 画面を線で真っ二つに区切る(スプリットスクリーン)手法が使われて いるが、これはこの映画でも、バイクチェイスのシーンで有効に使われている。

そういった総合力で作られた本作最大のクライマックス、ジェットスクランダー 発進の一連は、それに足る画面だ。せり出すスクランダー、スプリットスクリーンで マルチアングルで見せ、縦横を90度倒してシネスコの左右を思いっきり横切り、 奥行き一杯に飛んでいく一連はこれぞ最高潮だ。

個人的には…

シレーヌの顔は2話のほうが好き。さらに声が妖獣ベラの里見京子さんなのは 北浜晴子さん(あしゅら・女)がいるだけに残念ですが致し方ありますまい。 (豪ちゃんはこっちのシレーヌの方が色っぽくていいって、後に言って るんだけど)このシレーヌで一番ナイスなのが、スクランダー破壊のために 光子力研究所のトンガリ屋根へ留まった時に、

美しい月よ、そなたはこれから起こることを見ない方がいい…

という原作のお馴染み名セリフを呟くところ。他にも明が「デーモンハンターだ」 と自ら言うところがあったりして、脚本・高久進氏の再度原作を吟味しました、 な感じがいい!また、ザンニンに対して

笑わせるな!俺には味方もへったくれもあるかい!
ただ戦うことしか知らないデーモン族よりは人間界の方がまだマシということよ!

なんてコトを言ってて、「デビルマンらしさ」は着実に踏まえられている。 その一方で、デーモンにあって人間にない「やさしいふるさと… 美しい愛と限りない希望と夢」を守ろうなんてセリフが出ると、おいおいちょっと 明くんよ、かつてリタに言ったようなセリフじゃねーか、と高久デビルマンの血脈 であることを感じさせる。

もう一つ好きなのが、海中戦でブレストファイアーを出しながら、「頼むぞ… マジンガー」と言いつつ甲児の気が段々遠くなる…というシーン。コレ、後に 『グレートマジンガー』46話「闘魂!この命燃え尽きるまで!!」(勝間田監督) でもやってて、こちらは鉄也が完全に気を失ってしまうところまでエスカレート してるんだけど、この「限界を超える感」は燃えますな。

最後に音。

BGMは両方の作品から取ってるんだけど、Z側、デビルマン側、と ちゃんとメリハリつけて使われているのが、いわゆる流用とは違っていて 芸の細かさを感じる。また当然ながらSEも、伸びが違うあたりこの映画に 通底する「奥行き感」を倍加しているので、小さな音で聴いてはいかんですぞ。 エンディングの『空飛ぶマジンガーZ』はドラムのローミングで始まるこの映画 だけのバージョンで、水木アニキの歌い方も以後のものとは違う。どっちがどう ってもんでもないけどね。ところで、ポチとアルフォンヌがシレーヌに怯える シーンなんだけど、八奈見乗児さんは弓教授だからともかくとして、永井一郎 さん、このためにキャスティングしたのね!

つーわけで、テレビ放送以後もデビルマンはデーモン族と戦っていたんだ! という「事実」を見せ、夢を与えてくれたこの作品。最後に憎まれ口でなく 正しくZを称えた大人な明のセリフがコレ。

マジンガーZもとうとう空を飛んだな…
見事だった!イカしていたぜ!!

…明クンたら♪


『とうえいまんがまつり<<名場面>>』

 
(東映宣伝部・発行年月日不明)

「東映まんがまつり」公開に合わせて製作された絵本形式のパンフ。 『マジンガーZ対デビルマン』なので、正確にはマジンガーコーナーに アップするべきだが、デビ関係つーとこでご容赦。ジェットスクランダー がNG設定で載っているので、公開より先行して作られたようだ。

「2巻」のようだが、同時に「1」や「3」があったのかどうか、詳細不明。 公開映画ごとに通しナンバーがあったと見るほうが、現実的ではありますな。 会場で販売していたような記憶が。一般書店売りもあったのかな?

その他のラインナップは『仮面ライダーV3対デストロン怪人』『キカイダー01』 『ロボット刑事』『バビル2世 赤ちゃんは超能力者』『魔法使いサリー』。 『V3』と『Z対デビルマン』は他の2倍の4ページが割り当てられているところ からも当時の人気がうかがえる。

お陰で、デビルマン変身が見開きで載せられているし。


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