冥王星は dwarf planet に

経緯

太陽系の惑星は,古来は土星までが知られていた.ところが土星までの惑星の運動に,予期しないふらつきがあったために,さらにその外側に未知の惑星が存在するのではないかと考えられた.この結果,1781年に F.W. Herschel によって天王星が,1846年に U.J.J. Le Verrier,J.C. Adams の計算をもとに J.G. Galle によって海王星が発見された.これらの惑星は直径が地球直径の約4倍,質量が地球の15倍前後であるため,内側の惑星の軌道に少なからず影響を与える.

冥王星に関しては 1915 年に P. Lowell によってその存在が予言され,1930年2月18日に C.W. Tombaugh によって,Lowell 天文台で発見された.天王星,海王星はヨーロッパの天文学者たちによる発見であるのに対し,冥王星はアメリカの天文学者たちによる発見であった.なお,冥王星を表す記号は Lowell の名をもとに,P と L を組み合わせたものとなっている.

ところが観測の進展の結果,冥王星は他の惑星とは異なり,公転軌道が 17 度ほど傾いていて,かつ楕円軌道を描く事がわかった.1979年から1999年までは,太陽から見て海王星より近かったのである.さらに冥王星は半径1195kmと月(半径1738km)よりも小さく,1978年には衛星カロン(Charon)が J. Christy らによって発見された.(カロンの半径は590km以上と考えられている)

また,観測の進展の結果,2004年にはさらに外側にセドナが発見された.セドナは極端な楕円軌道を描き,大きさも冥王星より小さいものということが判明し,『第十惑星』とは見なされなかった.ところが2005年に発見された 2003UB313 は半径が1200km程度と,冥王星より大きい事がわかった.これらはカイパーベルトと呼ばれる領域に存在する天体であるが,特に 2003UB313 は冥王星よりも大きい天体であるために,惑星に組み入れるかが問題であった.(さらに 2003UB313 は衛星を持っている事も発見された)

もともと冥王星自身が他の惑星と異なる性質をもつために,惑星とするかどうかが過去から議論されていた.最近になり冥王星より大きい天体が発見されたため,惑星の定義を見直す事になり,国際天文学連合で定義を議論し採択する事となった.

この決議の結果,冥王星は『惑星』の定義からはずされ,dwarf planetに分類される事となった.dwarf planet の日本語訳は今後,日本の天文学者たちによって決められる事となるだろう.(後述の天文学会MLでも議論がなされ始めている)

国立天文台

「惑星」の定義について

国立天文台による解説.国際天文学連合の総会で決定された事項の解説. 決定までの詳しい経緯や決議案の和訳が全文掲載されている.

国立天文台 天文ニュース・アストロトピックス

国際天文学連合 (IAU)

日本天文学会

日本惑星科学会

New Horizons

NASA が2006年1月19日に打ち上げた,冥王星およびカイパーベルト天体の探査機.2015年7月に冥王星とカロン,2016-2020年にカイパーベルト天体に接近する.

冥王星の情報

セドナ(2003VB12) 2003 UB313
Astro Link

最終更新日 2006.9.10
このページの制作者 T_Tatekawa
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