遅咲きのヤマザクラが春風に舞い、コナラの葉が銀色に輝きだすと、赤いヤマツツジの花がいっせいに咲きはじめる。雑草もどんどん増えて目立つようになるし、おまけにあまり仲良くしたくないブヨやハチの動きも活発になる。
 山菜を探しながら歩いていたら、背中にチクッと刺されたような痛みを感じた。またやられたと思ったが、特に腫れている様子はない。好んで雑木林に住んではいるものの、虫は大の苦手。なぜか人一倍刺されやすい体質で、つい敏感になってしまう。
 翌日になると、ぶつぶつと小さな湿疹が出ていた。やはりなにかに刺されていたのだ。しかし、薬をつけても腫れが引く気配がない。以前毛虫に刺された時は、湿疹が水泡なってなかなか治らず往生した。その時の感じに似ているが、不思議と痛みもかゆみもあまりない。
 「もしかして帯状疱疹かもしれないよ」、軟こうを手にした妻がいった。「タイジョウホウシン?」、「そう, 雅子様が罹られて有名になったあれよ。手遅れにならないうちに早く診てもらってね」
 赤い湿疹は背中と胸の左側に広がって、衣服がさわっただけでもピリピリと痛みを感じるようになった。連休前の忙しい時間を縫って病院に行くと、妻の予想どおり帯状疱疹。子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、神経の中に隠れていて、体力の低下などをきっかけに、再び活性化して起きる病気だ。症状は人によってまちまちだが、下手をすると神経痛が残ることもあるらしい。
 「初期だから薬を飲んで二週間もすれば治りますよ」若い医師にそういわれたが、痛みは日増しに強くなり、眠れない夜が続いた。ストレスや疲れが溜っている証拠だから、休養するのがいちばんだが、幸か不幸かゴールデンウィーク。なにもしないで過ごすにはもったいない。
 昨年もこの時期に体調を崩した。いつのまにか、季節の変わり目を気にしなければならない年齢になってしまったようだ。そんな自分に納得はできないが、今年もまた、鮮やかな新緑と虫たちの季節がやってきた。

(05.5.15掲載)

タイジョウホウシン
NO35