爽やかに晴れ上がった青空に、街路樹の新緑が美しい。植え込みのツツジもいつのまにか満開になっている。
 仕事にひと区切りがついたので、会社近くの居酒屋に立ち寄った。少しごぶさたしている間に、酒肴は春のメニューに変わっている。女将の今日のお勧めは、タラの芽の天麩羅とギョウジャニンニク。いかにも旬の味わいに思わず口もとがほころぶ。すっかりできあがってしまい、やっとの思いで那須塩原に帰りつくと、ひんやりと心地よい風が出迎えてくれた。
 関東北部山沿いにもやっと遅い春がめぐってきたようだ。薄紫色の小さなスミレの花が日だまりに広がり、黄色い西洋たんぽぽも目立つようになった。鮮やかな新緑になるまでにはもう少し時間が必要だが、木々の梢にも幼い葉が開きかけている。
 雑木林の春は、地面に近いところからはじまる。雑草や山野草が葉を広げ可憐な花を咲かせると、次にヤマツツジなどの低木が新芽を開き、やがてヤマザクラやリョウブ、コナラやなどの高木へと新緑がひろがっていく。葉の展開が低いところから始まることで、すべての草木にまんべんなく春の光りが分配される。不思議で合理的な自然のシステムに驚いてしまう。
 せっかくの休日だというのに、カーテンから漏れる光りのまぶしさで、六時前に目が覚めてしまった。なんとも不本意な早起きだが、優しい日ざしに誘われて、妻と朝の散歩に出かけた。
 木の芽どきの散歩は楽しみが多い。日ごとにかわる草木の営みも興味深いが、なんといっても山菜。一時間ほど散策すれば、ビニール袋いっぱいの山菜が収穫できる。あと一〜二週間もすれば、ワラビ、ゼンマイをはじめ、地元でタランボと呼ばれるおなじみのタラの芽や、最近人気のコシアブラの新芽が食べごろになるはずだ。
 ちょっと時期が早過ぎると思っていたが、道ばたに小さなワラビが顔を出している。わずかに湿気を含んだ柔らかな風が、僕らのかたわらをすり抜けていった。

(05.04.24掲載)

木の芽風
NO34