街を歩くと、どこからともなくジンチョウゲの香りが漂ってくる。コブシやモクレンの白い花もずいぶん目につくようになった。コート無しでは少し肌寒くも感じるが、身軽になった分だけ、春のあたたかさを実感できる気がする。例年どおりにサクラの花が咲き始めた東京は、どこか明るく華やいだ雰囲気に包まれている。
那須塩原のサクラの見頃は今月中下旬。その山沿いにまで本格的な春がやってくるには、もう少しだけ時間が必要だ。マイナスにはならないまでも最低気温が0℃近い日も多いし、夜半に白いものが散らつくこともある。長かった冬が、やっと終わりかけているものの、吹き抜ける風はまだまだ冷たい。
それでもホームセンターやマーケットの店先には、季節を先取りした色鮮やかな花々が並び始めた。ひさしぶりに来客の予定があるので、花をしつらえて出迎えることにした。赤いデイジー、白いノースボール、紫色のオダマキなどなど。それぞれをプランターにきれいに並べて、玄関先の階段に飾る。背の高いコデマリはオレンジ色のマリーゴールドといっしょに大きな植木鉢に寄せ植えにした。この辺りは4月に入ってからでも、霜が降ることがあるので油断はできないが、殺風景な雑木林の我が家にも、ひと足早い小さな春が訪れた。
浦和(現さいたま市)に住んでいた頃は、季節の移り変わりなどまったく無頓着だったし、草花にもさほど関心がなかった。だが、ここに移り住んでからというもの、自分でも驚くほどに、季節の変化に敏感になり、ときどきの草花にも興味を持つようになった。無機質で味気ない都会の生活と違って、四季おりおりの自然が、すぐそこにあるからだろうか。
とくに春の訪れは待ち遠しい。少しでも日中が暖かく春めいてくると、なぜかしら心が浮き立ち、色とりどりの草花が欲しくなる。あと一ヵ月もしないうちに、花と新緑の季節になるのはわかりきってはいるものの、やっぱり春を待ちきれない。
(05.4.03掲載)

