まだ日中の明るさを残した空に、カナカナの鳴き声が響き始めた。カラ梅雨模様の今年は、きっと夏の訪れも早いのだろう。
木漏れ日の眩しさで目覚める朝。軽やかな光りに、木の葉がすがすがしく輝く午前。大きく広げた枝葉で、直射日光を柔らかく遮ってくれる昼下がり。紫色の空をキャンバスに、美しい木々のシルエットを描き出す夕暮れ時…時間とともに多彩
な姿を見せてくれる雑木林。
この辺一帯、終戦のころは芋畑だったそうだ。地面を良く見ると、いく筋もの畝(うね)が走っている。だから、いわゆる里山の雑木林とはずいぶんおもむきが違う。
コナラ、アカマツ、ヤマザクラ、大きな木のほとんどが50年生以上、高さは15メートルほどにも育っている。その他に、リョウブやヤマツツジ、アオダモ、サワフタギ、クロモジなど、数え切れない種類の雑木が茂っている。山野草も多い。木の実や虫を目当てに小鳥が集まる。野うさぎもいれば蛇もいる。これが我が家を囲む雑木林だ。
今でもいちおう自治会の組織された別荘地なのだが、大手デベロッパーが管理している土地ではない。20〜30年前に開発した会社はとっくの昔に消滅している。いうなれば元別
荘地。
その管理されていないさり気なさがとても気に入っているのだが、最近、ちょっとこまったことが起きている。
あちこちの雑木林が100坪、200坪の単位で伐採されているのだ。文字どおりの虫食い状態。「更地にすると高値で土地が売れる」というまことしやかな話もあって、なかなか止まる気配を見せない。しかし、そうした更地のほとんどは、家が建つでもなく、背丈ほどの雑草に被われ、見るも無惨な姿で放置されている。
半世紀もかけてかたち作られた雑木林がいとも簡単に伐られていくのは見るにたえない。それぞれの事情はあるのだろうが、できることならそのまま残したいものだ。
またどこかでチェンソーの音。我が家の借景も伐られはしまいかと、せんせん恐々の日々が続く。
(04.07.11掲載)

