それを初めて目にした時には、ちょっとしたカルチャーショックだった。いかにもまずそうな雰囲気をただよわせるその惣菜の名を「しもつかれ」と知ったのはずいぶん後のこと。けっして食べることは無いだろうと思っていたが、過日それを味わう機会に恵まれ(?)た。
お茶うけに自家製のおいしい漬け物などを必ず出してくれる近所の農家がある。そんなことも楽しみでときどき立ち寄るが、その日のご馳走はなんと「しもつかれ」。断るわけにもいかず、おっかなびっくり口に入れた。強烈な第一印象とは違って、思いのほか美味しく素朴で懐かしい味がする。しかし鮭からでる独特の臭みのせいか、今ひとつ舌に馴染まない。
僕は北海道で生まれ育ったので、鮭の頭とアラ、酒粕を使った「三平汁」や、鮭の軟骨を入れた「氷頭なます」などは幼い頃からなじみがあるし、油揚の入った切り干し大根の煮つけや大豆の煮物も好きだ。人参もけっして嫌いでは無いのだが…
いまさら栃木の人を前におこがましいが、「しもつかれ」をネットで調べて見た。
残り物を無駄にしないという農家の知恵と、厳しい冬の生活の中から生まれた、栃木県ではポピュラーな郷土料理で、節分が過ぎた初午の日に作り、無病息災と家内安全を祈って稲荷神社に供えするのだとか。
材料は、正月の残り物の塩鮭の頭、節分で余った福豆、それと大根、人参、油揚げ、酒粕などが一般
的。作り方はだいたい共通のようだが、それぞれの家庭によってずいぶん味が違うらしい。
年配の人がいる家庭では、今でも食べられているが、最近の若者にはあまり人気がなく、手間ひまかかることも手伝って、徐々に食卓から消えつつあるようだ。
「しもつかれ」を美味しく食べられなければ、栃木県人ではない!というわけでも無いだろうが、移住五年目のビギナーとしては少々複雑な心境である。
(04.03.07掲載)

