そろそろ一年が経つ。隣町に天然素材100%の味噌を代々受け継いで製造販売している老舗がある。昔ながらの味噌の手作り体験ができるというのでお願いした。
 本物の味噌の美味しさを知ってもらおうと当代のご主人が始めた企画で、自分たちの手で仕込んで、それを持ち帰って保存発酵させるというもの。材料の用意や下ごしらえはすべてやっていただけるので身体ひとつあればいい。
 店に着くと、大豆がちょうど良い具合に湯で上がっていた。さっそくこれを柄杓(ひしゃく)ですくってミンサーのような機械に入れてすり潰してゆく。この作業が終わると麹(こうじ)と塩を混ぜ合わせる。麹はもちろん自家製。おいしさの秘密はこの麹の善し悪しにあるという。またたっぷり使うのもポイントなのだそうだ。
 ご主人いわく、本来の味噌は大豆、米(麹)、塩だけが原材料。いまマーケットで売られている多くのものは、添加物が多く「味噌風調味料」でしかないと言い切る。
 店で売る商品は地元那須産の大粒大豆と自然塩を使って作るが、 この日の材料は北海道産の丸大豆30kgと赤穂の甘塩8kg、それに麹40kg。せっかくの手作り体験ということで、こだわりの材料が用意されていた。
 大きな木桶に入った材料をスコップと手を使ってまんべんなく混ぜ合わせるのだが、これが以外とたいへんな作業。ふだんスコップなどあまり使わないから力加減がわからない。つい力を入れ過ぎて桶を削ってしまう。木屑たっぷりの味噌になりそうだ。仕上げはやっぱりプロの手で。さくさくと小気味良く、滑らかに混ぜ合わされてゆく。さすがに年期が入っている。
 仕上がった味噌はポリ容器に分けて持ち帰り床下に入れた。このままいっさい手を加えず一年間熟成させれば出来上がる。春夏秋冬の寒暖を経て、自然の力が美味しい味噌を作るのだという。
 今年の夏はあまり暑くなかったし、秋は例年になく暖かい。さてさて手前味噌の出来映えは?。

(03.11.23掲載)

手前味噌ですが
NO10