手塚治虫
展覧会名:手塚治虫-過去と未来のイメージ-展
会場:伊勢丹美術館
日時:1995年8月25日
入場料:900円



 1989年に没した手塚治虫については、没後幾度となく展覧会が催されている。没後翌年に東京国立近代美術館で開催された「手塚治虫展」は、美術館で漫画の展覧会が行われた初のケースとして記憶に残るものだが、その内容は手塚の業績を原稿を並べることで提示したもので、編年、網羅的な展示が特徴だったといえる。

 さて、今回の伊勢丹美術館の展覧会は、もちろん原稿が並べられてはいるのだが、それ以外に手塚の子供の頃の作品、例えば戦前にノート類に描かれた漫画や、虫を緻密に描写した昆虫図鑑などが展示され、手塚のあまりにも、というべき早熟ぶりを満天下に指し示してくれる。

 あるいは、手塚作品に登場するキャラクターをモチーフにしたオブジェの数々。いぜん、原宿のラフォーレで開かれた手塚治虫を題材に、大勢の作家が自分なりのイメージで作品を作り展示した展覧会があったが、それを思い出させる展示だった。

 なかでも「三つ目がとおる」に登場した「脳みそトコロテンマシーン」など、ガラクタを寄せ集めて写楽泡介が作った機械とほとんどおなじものが、再現されていた。額に絆創膏を張った子供に、是非とも椅子に座っていてほしかったね。

 図録がいい、というより図録に付いてきた漫画本がいい。展示されていた私家版のまんがをきれいに製本したもので、これが図録とセットで2000円とは素晴らしい安さだ。もし手塚直筆の私家版が出たとしたら、数千万円の値段が付くこと間違いなかろう。


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