縮刷版2007年9月中旬号


【9月20日】 衰えない暑さに泥のような汗をかきつつ居眠りして目覚めたら始まっていた「あいどるマスターXENOGLOSSIA」だったけどうーんもはやいったい敵が何なのかが見えなくなって、んでもって何をどーすればどーなるのかってゆー目的もはっきりしないまま、巨大なロボットのアイドルが何かと戦っている構図にちょっと頭が痛んできた。悪巧みをしていた猫の本部はどこの誰かが放った量産型に潰され、1人残ったモンデンキントジャパンに救っていた野郎が今は裏の組織の最高責任者? ってことになってるみたいだけれどもその彼がいったい何をどーしたいのか見えないからまた始末が悪い。

 それが世界征服めいたことだったとしても所詮は地球規模でしかない人間の浅知恵。宇宙空間をも自在に行き来でき、異空間にだって入り込める性能を持ったアイドル様が5体がかりで挑まなきゃならない事態とは思えない。アイドルってそんなに安っぽい存在だったのか。それとももっとこう、地球どころか宇宙の存亡に関わる事態の収拾のために次元の異なる世界から送り込まれたとかいった設定があって、それがいよいよ発動するってことなのか。でも来週で終わりみたいでアイドル様が相手にするラスボスめいたものも出てこなさそー。やっぱりだとしたら地球の神様でしかないのかアイドル。それも美少女大好きな。うーんどこかで絵を描き損ねてしまった気がするなあ。でもDVDは買うけど。買い続けるしかないんだけど。限定版の水着バージョンだし。

 一方の「機神大戦ギガンティック・フォーミュラ」はまだ世界の理と人間が対峙するって雰囲気がやや残っていて、アメリカが持ってたジュピターを倒した隠れキャラとスサノオが兄弟分みたいな風体なのに激しくバトルしているのは、その隠れキャラが悪の化身みたく世界を滅ぼそうとしているのに対して、スサノオは破壊神といわれながらも善の化身めいて世界を守ろうと動いているかだら、といった具合に善と悪の二元論的世界観が浮かび上がって来ていて見えて分かりやすい。そんな神様たちがどーして首だけの姿で現れ人間を使い鎧をまとわせ戦いを始めるに至ったか、って理由付けがあんまり見られないけれど、まあ神様なりに事情があったっってことで。

 いずれにしても遺跡的な存在より託され戦うという2つの話が、ともに搭乗者のあっけらかんとした性格によって危機を乗り越え平和へと向かい収束していくってゆーのは何か時代の象徴をしているものなのか。どっかの誰かが流行りのアニメの都合の良いのを集めてなにやら主義ってものを導き出していたりするけど、最新の流行から抽出するなら右から左へ受け流す”ムーディー的”なる思想こそが07年代の想像力なのだと、5月辺りからずっと言い続けていてそれがいよいよはっきりしたって言えそう。萌芽はお節介から事件に巻き込まれ気が付いたら悪の王子になっちゃってた「コードギアス 反逆のルルーシュ」の頃から見えていたんだけれど。これ、絶対に何も本人は決めてないよね、いつも場当たり、右から左に流されてるだけ。なのにどーして強気な男のサバイバル話だなんて誤解をしてしまうんだろー。

 もっともそろそろムーディー勝山にも飽きが見えて来ているからちょっと悩ましい。どれを聞いても流れがパターンとして見えてしまうんで笑えない。とゆーかあの芸は長く見続けて生まれるいたたまれなさか自虐の笑いへと転じる瞬間を楽しむもの。唄そのもの、顔そのものが可笑しいんじゃないんで短いテレビのコーナーにはむいてない気がする。やっぱりここぞって時の宴会で見たいよなあ。そんな感じで時代の流れる速さを取り入れるんだったら07年後半は、“ムーディー的”にあらゆるしがらみも悩みも受け流すんじゃなく、はじき返して「そんなの関係ねえ」とばかりに突き進む“よしお風”の思想が世界を席巻することになっているに違いなく、アニメもそんな感じに無責任な主人公の場違いな暴走に誰もが辟易とする作品が数多く登場して来ることになりそー。いったいどれがどーなんだろう。関係ないけど小島よしおの面白さが分かりません。僕も歳を食いすぎたか。

 絶望した。キーノートスピーチっちゃーその年のトレンドを語り未来のビジョンを示して来た人を驚かせつつ感銘させつつ将来へと誘う重要であり且つ高尚なものだってずっと信じていたんだけれどいよいよ開幕した「東京ゲームショウ2007」の今年の基調講演に登壇したソニー・コンピュータエンタテインメントの平井一夫社長兼グループCEO。去年の久多良木健さんみたいに発売前であるにもかかわらずちょっと「プレイステーション3」の値段を下げるって発表をして来場者を唖然とさせるよーなサプライズは一切仕込まず、淡々と「PS3」向けの開発環境の整備や対応タイトルの自社開発も含めた充実なんかを示して「PS3」が持つ付加価値を高めようっていったマーケティング的な話ばかりで聞いててどうにも頭に響かない。

 なるほどデュアルショック機能を搭載したコントローラーを発表したけどこれって特許絡みで搭載できず捨てておこうって1度は決めた技術じゃなかったっけ。それを言い訳もしないで導入してしまうあたの揺れる定見も微妙だけれど、振動するコントローラーが使えるかどうかってのが「PS3」の普及において決定打となることも、また内野安打になることすらもなさそーなのに、さも素晴らしい商品だって感じに喋られるからザラ付き感も増えていく。起死回生の策として年内に登場を予定していたオンライン空間上に部屋を持っていろいろ交流や自分だけの趣味を楽しめるようにする「HOME」も、サービスの充実を理由に来春へと延期するって言っちゃって絶望感が失望感へと変わり涙を誘う。

 あとは社長ではなく担当者が出てきてPSPと「PS3」の連係機能を強化する話の実演をしてみせたけれど、基調講演ってゆー1本で金だってとれるくらいの大々的にして恭しい場所で本人が将来のビジョンを示す訳ではなく、部下が明日にも始まるサービスを説明したって聞いている方はそれがどうした、くらいにしか思えない。ある意味できわめて堅実で現実的な人なんだって見えてくるけれど、欲しかったのはそんな新製品発表の延長ではなく今のテクノロジーの進化がもたらす未来のビジョンであり、あるいはコンピュータエンタテインメントというものとテクノロジーの進化が結びついて生まれる世界を「PS3」でどうキャッチしていくか、っていった具体性をある程度持った長期的視座に立った戦略だった。なのに平井さんはひたすらに新製品発表モード。これなら聞かずにストレートに場内へと入ってコンパニオンさんを見て歩いた方がずっと充実していたよ。

 実現性はともかく持つ己のこだわりを広げ敷衍させることで生まれるニーズを満足させられる製品なりサービスを見せてほしかったけれども出来ないサイコロは振らないくらいの慎重さをもっているみたいで平井さん、感動し憧れるよーな夢を見せてはくれなかった。見せられないのか見せたくないのか、微妙だけれどもまるで夢を語らずビジョンを示さず、だとしたらせめて短期的な大問題を解決して欲しいとばかりに高まっている値下げの声には答えないのは自ら八方ふさがりの奥へと駒を進めているよーなもの。ちょっぴり暗さも浮かんだけれどもいマーケティング志向を選び本来的な姿であるドリーマーをパージする動きの中ではそれも仕方がないのかも。せめて壇上に久多良木さんが乱入して混ぜっ返したりしてくれれば愉快だったのに。

 そんな絶望感に打ちひしがれている中でもしっかりと新型の「PSP」は買っていたりするから始末に終えなさすぎだ自分。「東京ゲームショウ2007」の開場がある幕張から帰る京葉線で終点の東京駅からビックカメラ有楽町店が近すぎるのがいけない。んでもって全色あまりまくりの中から当然のよーにピンクを買ってワンセグチューナーを買ったんだけれどよくよく見たらメモリースティックついていないんだ今の「PSP3」。最初のバージョンの確かとくとくセットはポーチもスティックも付いていたっけ。簡略化も激しいけどまあしょうがない。

 さて「PSP」のワンセグは、画面がデカいだけあってなかなかの迫力。携帯電話でチマチマ見るよりよほどテレビっぽい雰囲気をあじわえる。携帯の小さい画面じゃあここまでは雰囲気、出せないだろーな。ワンセグっていったら携帯電話が中心で、最近ではパソコン用のチューナーとか、シャープの電子辞書とかDVDプレーヤーとかいろいろ出ている。外でテレビが見られるんだったろ、ワンセグ付きの機械をいつか買おうかって考えて買いあぐねていたんだけれども、それなりのメニューにこいつは買っておかなければ後悔するって言わた気がして買ってしまった。でも何して遊ぼう。「みんなのゴルフ」はやり込みすぎてたしなあ。


【9月19日】 頑張って起きていようと思ったものの興味の薄さからとっとと寝ていまってチャンピオンズリーグの開幕戦として地上派で放送されたセルティックの試合はどーやら中村俊輔選手の不調もあってセルティックが負けたみたい。まだ予選リーグの初戦なんで挽回は効かないこともないけれど、勝ち点を計算できただろー相手だっただけにこれで昨年に続いての予選リーグ突破、決勝トーナメント入りは難しくなったかも。まあ初戦はスペインの2部に比べてどっこいだろーと言われているスコットランドリーグなんで実力的にはこんなもんが妥当ってところか。

 だからそこで途中交代させられちゃう選手が日本代表の中心だったら、スペイン2部で頑張っている福田健二選手だって立派に日本代表に入ってエースと呼ばれたって良さそうだけれど果たしてイビチャ・オシム監督の目には映っているのか。オーストリアの2人よりも実は映ってて突然呼ばれたりすると嬉しいけれど、それがなくても福田選手にはスペイン1部に入ってゴールを決めてかつて1人もいなかったスペインでの日本人の成功事例になって欲しいもの。それでこそカステリョンのユニフォームを買った甲斐があるってもんだ、って書いてふと思い出したけれども福田選手って今どこのチームにいるんだっけ?

 前年の受賞作だった「イヴは夜明けに微笑んで」だと色によって魔法の性質が別れていたりする上に、何やら世界を脅かす存在が出てきて魔法使いとそれから武器使いとか手を取り合って敵に立ち向かったりする設定があって、過去にある魔法使い物とはちょっと違うぞって気にさせてくれたけれどもさすがはファンタジーの名門「富士見ファンタジア文庫」が主催する賞だけあって今回の佳作受賞作、手島史詞さんの「沙の園に唄って」も世界に散らばった神の子とゆー伝説の上になにやら運命を背負って生まれた少女がいろいろあって、今は街のはずれの森の中に1人で住みつつ腹を空かせて街に出て、ぶっ倒れたところを剣士と唱術士の2人に助けられて感謝感激。そして始まる少女の冒険は、少女につきまとう運命の過酷さを浮き彫りにしつつ、それを乗り越え進もうとする勇気に感動させられる。

 ただ能力を持って生まれた少女が能力に導かれるままに活躍するストーリーってだけではなく、能力が持つ意義を描きそれを持ったが故に起こった悲しみを描いていたずらな超人願望を牽制する。師匠と仰いだ人から突きつけられる慟哭に満ちた言葉をそれでもストーレートには受け入れられない少女の心に起こった葛藤たるや。そこで潰れるんだったらそれまでだけれども、引きずりつつ立ち直りつつ歩み始めた少女がたどり着く場所はいったいどこだ。そして少女は普通の女の子になれるのか。とりあえず次巻も読もう。

 それにしても魔法を使えはしても一見平凡な少女が運命を背負わされ流離いの果てに何かを得ようとする話って、瑞山いつきさんの「マギの魔法使い」(角川ビーンズ文庫、476円)とも重なるなあ。そっちは国の命運でこっちは世界の命運に関わるけれども、共に理不尽な運命にあらがい生き抜こうとする強さとしたたかさが感じられる。能力を発動させた少女に守ってもらうとか、自らが能力者となって少女を救うとかいった理想と妄想の入り混じった願望からはややはずれてはいるものの、読んでともに理不尽さを受け入れつつ反発しつつ、どうでも折り合いを付けていく大切さって奴を伺わせてくれる。深いなあ。そしてそんな深さをキャラの面白さでだけではない観点から見抜く眼力。富士見ファンタジア文庫のこれが強さというものか。

 河童も狸も従えていないキリリとした魂の役者に取材してから東京国際フォーラムへと回り、いよいよ明日の「東京ゲームショウ」でもってスタートする「JAPAN国際コンテンツフェスティバル」のオープニングセレモニーを見物。ステージが暗い中にピンスポットも当てられずたたずむ役所広司さんは撮りづらいなあ、なんて思いつつ進行を見つめてそして日本を代表するコンテンツの創造者たちがいよいよ登壇。堀井雄二さんに富野由悠季さんにPUFFYに井上雄彦さんにピカチュウ&石原恒和さんに山田洋二監督に杉山道成さんにえっとあと誰がいたっけ、ともかくそれぞれがそれなりなコンテンツを作り上げて来た重鎮たちの勢揃いぶりが、このイベントにかける主催者の意気込みって奴を感じさせる。で

 とはいえ人選が意外性にはちょっと欠けるって印象。アニメ代表が富野さんじゃなく宮崎駿監督だったら、居て当然だけれどそんな場所に出てくる意外性で内心うずいたかも。「コードギアス 反逆のルルーシュ」の谷口吾朗監督だったらなおいっそうハッピーラッキー。世界に日本のコンテンツをアピールしようって創設された「コ・フェスタ」だけに、」アメリカからだって来ているかもしれないお客さんに反米半帝国主義的な運動が中心になってる「コードギアス」がもたらす嫌味っぽい衝撃への反感なり反応をちょっと見てみたかった。そーやってて物議も醸してこそ盛り上がる「コ・フェスタ」って訳だけれど、でもネットを通じてみている海外じゃあそーゆー面よりキャラの可愛さ話の展開の早さで受けているみたいだからなあ。政治とか気にしないのがアニメファン。趣味でつながる手と手。アニメが作る宇宙の平和。素晴らしい。

 壇上では隣のキャラクター代表ということで登壇したピカチュウにあれこれちょっかいを出していたアニメ代表の富野さん。「ガンダム」の後に日本中を虜にしたキャラクターってことでライバル意識を燃やしていたのか。映画は生まれた時から商業で見せ物だったものを芸術にしようと頑張って来た、なんて話をする映画代表の山田洋二さんはお祭り気分の中でも大人っぽい態度を崩さないのがさすが。音楽代表のPUFFYはパパパパな雰囲気のまんまで横に座ってた外国人のプレスが登場に反応していたところを見るとやっぱり人気があるんだ海外でもって強く実感。ゲーム代表は堀井雄二さんでこれも納得の人選。確か双方向だからゲームは面白いんだってことを喋ってた。そんなこんなでセレモニーを終了してあとは久石譲さんをフィーチャーしてか何かのコンサートだったけれども原稿書きのためにとっとと退出。明日からのゲームショウに備える。さても40日。どれだけ世界にアピールできるんだろーか「コ・フェスタ」。でもやっぱり長いよ40日は。でも2週間に詰め込まれても取材する側として困るしなあ。


【9月18日】 うーん惜しい。いや負けは負けなんだけれども試合の運び型としてはこれまでのイングランド戦、アルゼンチン戦よりもはるかに真っ当だった気がするサッカー女子日本代表こと「なでしこジャパン」による女子ワールドカップ第3戦のドイツ戦。なにしろボールがぐるぐると回る。バックラインからサイドへと入れて中央に折り返しそこから散らしてって感じのパス交換が実にしっくりと来て途中なんてドイツを圧倒している観すらあったけれどもいかんせんフィニッシュがうまくいかない。トップ下付近にいる宮間あや選手に入れてもそこからトップにボールが渡らず奪われ反撃を喰らう繰り返し。この試合に限っては宮間選手から前へと進まない光景がたびたび見られて何かついていなかったか、それともよほど警戒されていたかは分からないけどちょっとブレーキになってしまっていた。

 だから後半からもっとボールをキープできる荒川恵理子選手に交代したんだろーけどなるほどキープをする力と技術はさすがなガンちゃん、後ろから巨体のドイツ選手が来たって奪われないのが素晴らしい。んでもって前を向くと技術とスピードでするっと抜けて好機を演出。これならもしかしてって思ったところに魔が差した。ゴールキーパーと交錯した際に膝蹴りをぶち込まれて脇腹を痛めて退場。せっかく良い雰囲気が出ていたところに水を差されて気持ちがちょっぴり落ち込んだ。それでもこの日に限っては大野忍選手もドリブルが冴えてて何度か前へと抜けるプレーを見せていて、ここに集めればあるいはって思ったものの時間も経って前にボールが届かなくなっていたこともあってあんまり活躍できなかった。

 それでもゴールキーパーの福元選手の超好セーブがあって真正面からのシュートを幾度となくはじいて真っ当な失点はゼロ。コーナーキックからのこぼれ球をたたき込まれ、あとPKで1点を与えただけで試合内容はスコアに見合わず五分と五分、は言い過ぎでも日本4割8分にドイツ5割2分といった具合に互角な空気はあったって言えそう。これがだから出せていればイングランドなんて簡単に蹴散らせたしアルゼンチンからだって10点は奪えたんだろーけど、いかんせん上海はピッチが悪かった。パスが回らずドリブルがひかっかっては技術で押すなでしこの力は半減してしまっただろー。あとホスピタリティって言葉とは無縁の観客による一方的なドイツ応援。無関係の国だったら普通は弱い方を応援するだろう、それが判官贔屓ってもんだって言いたくなったけれども中国に九郎判官義経はいないのだ。強い英雄が称揚される国だもんなあ、仕方ないけどでもこれじゃあ、北京五輪でいろいろと言われるんだろうなあ、大変だぞベトナムとかインドの選手たちは。

 「鉄球姫エミリー」(集英社スーパーダッシュ文庫)を読むなら心せよ。とにかくすさまじい。そして面白い。鉄球がうなり鉄槌が振り下ろされ、鉄矢が放たれ鉄槍が繰り出される。それらの武器を、超重量級の甲冑を身につけた者たちが、内なる力を発現させて易々と手にして取り扱い、地を駆け空を跳び壁を登り山野をめぐって激しいバトルを繰り広げる。武器がひと振りされるたびに敵の肉がちぎれ内臓がえぐれ、肋骨がひしゃげ頭蓋骨が砕け、生命は血と肉と脳漿と臓物のカタマリへと形を変える。

 かくも残酷でグロテスクなバトルを繰り広げる一方の主役はエミリー姫。王国の第1王女として生まれ跡取りとして育てられながらも、妾腹だったが故に本妻が王子を生んだ途端に脇へと追いやられる。二心のないことを訴え田舎に隠居したものの、位を継いで王となった王子の体力が弱いことを見た政治が姫を放ってはおかなかった。王位簒奪の誘いをかけて姫の元へと密使を送る。それを見て病弱の王をもり立てる主流派は、エミリー姫の排除を企てかくして姫の隠遁する居城へととてつもない戦闘能力を持った亡霊騎士たちが送り込まれる。

 その亡霊騎士たちがもう一方の主役。貴族の娘だった少女と仕えて貴族の息子が共に落剥した身を助け合いつつ、汚い暗殺者へと身を落としながらも父祖の仇を撃つべく世界を流離っていた。そして見つけた仇ことエミリー姫に仕える騎士。姫の居城へと乗り込そして起こった激しいバトルは、姫とその側近たちを襲って人々を次々と潰れてひしゃげた肉塊へと変えていく。表紙に描かれ口絵にも添えられたエミリー姫の可愛らしい姿から、おてんば姫がやんちゃな力で置かれた境遇を脱出しようとする冒険ファンタジーだと思われて当然。喋れば卑猥で乱暴な言葉が口を付く姫のキャラクターも、そんな展開に華を添えるものだと喜び、安心して読んでいたらとんでもない方向へと引っ張られて心が激しく揺さぶられる。

 命を賭けて戦うってことはどういうことなのかを示してくれて、ライトノベル的な予定調和とはまるで違う、バイオレンスならではの残酷だけれど当然ともいえる血と脳漿にまみれた熱く激しい地平へと読者を誘う。重量級の武器と甲冑がすさまじい速度で交錯するバトルシーの激しさは、目にヘビーでスピーディーな世界が浮かぶよう。そして物語の残酷で悲しい展開は慟哭を誘い憤りを浮かばせどうしてなんだとむなしさに心溺れさせる。その冷徹で残酷な様はあの絵柄で非道なことをやってのけた「コードギアス 反逆のルルーシュ」だってひるむかも。かくもすさまじい小説が「集英社スーパーダッシュ文庫」の大賞を受賞したばかりの新人の手によるものとは。

 仮にこれで絵が天野喜孝さんだったら、そして朝日ソノラマあたりから出た小説だったら夢枕獏さんか菊地秀行さんに続く伝奇バイオレンスの新鋭だと思われて普通に読まれたかもしれない。あるいはノベルズでも同様。それが本田透さんらの作品といっしょに、可愛らしいパッケージでもって「スーパーダッシュ文庫」から登場するから世の中は分からない。というかライトノベルって世界が持つ懐と間口の広さを強く証明している。絵の可愛さやコミカルさに引っ張られ、冒頭のコメディタッチの展開に喜んでいたらとんでもないところへと連れて行かれて呆然とさせられる罪作りな1冊。著者は八薙玉造さん著。いったいどんな脳内をしているんだろう。ともあれ是非にご一読。とにかく驚かされること大請け合い。

 「週刊ダイヤモンド」が新聞業界を取り上げていたんで買って読んだ身近なことが欠かれてあってまあそれなりに合ってはいるけど違ってもいるかなあって観じ。モラルハザードは給与等の待遇面よりもひとつの部署で2つの新聞を作るんだって意識が欠如していて、手前ん所がそれなりに回ってさえいりゃああとは安心、締め切りの早い専門紙なんかに記事を寄せてる余裕なんざぁございませんとしらばっくれるような態度を取り始めた時に、てやんでえやってられっかって感じに起こるんじゃなかろーか、いやそれだとモラルよりさきに媒体自体はハザードするけど。クラッシュか。

 ネット戦略に関してはウェブファーストに挑むって点で注目なんてあったけれども海外のメディアがやってるウェブファーストはどんな特ダネだってウェブで一報を流して本紙では詳報やら解説やらを厚くしていくって媒体特性を考えた戦略であって、あらゆる情報を速報系メディアと勝負するかのごとくウェブでどんどんと発信することじゃあないだよなあ、そこが本当に理解されているのかが微妙。たぶんあんまり理解されていないような気も。だからきっと大変だぞう。あとは朝日が高級紙を創刊するとかあったけれども新聞で読みたい高級な“報道”なんてものはありません、“情報”ならあるだろーけどそれはコンテンツそのもののクオリティってよりは高級な暮らしをしている人たちにマッチしたコンテンツって意味での高級さなんで雑誌ほど特化できない新聞でそれはちょっと無理かも。若い人向けとかってセグメントじゃあぴくりとも動かないことは綺麗なタブロイドが半ば証明しちゃったし。新媒体は狙うならだからオタクかその辺り。「まんたんブロード」日刊化、なんてったら売れるかな、売れないか。


【9月17日】 ご奉仕するにゃんってルイズに言われたってなあ、あの肋っぷりだとあんまり食べてない野良の子猫が頭をよぎっていたいけさにミルクをあげたくなっても拾い上げて抱きしめたいって気分にはならないよなあ、いくら才人でも。対してシエスタは「ゼロの使い魔」に出てくる登場人物でもアンリエッタ女王やキュルケに並び立つナイスバディぶり。それがいつかの杉本彩さんみたいな兎の格好でぴょんぴょんと跳ねてこられた日にゃあぶるんぶるんと目にも素晴らしい光景に、才人ならずとも両手を広げて抱きかかえたくなるだろー。でもってその直後にルイズに黒こげにされる、と。これだから男女の間柄って難しい。とはいえやっぱり才人がうらやましい。ああ肋に触れたい兎に抱きつかれたい黒こげにされてそしてパンツを洗いたい。

 よーやくやっとサッカーのユーゴスラヴィア代表を扱った「引き裂かれたイレブン オシムの涙」を干渉、オシムて名前が前面に出ている割には最初はあんまり出ていなくって、日本でいっちゃん知られている名前をとりあえず看板代わりに使っただけかと思ったら中盤以降は怒濤の登場。でもってその強烈な存在感と示唆に富んだ言説を見せることによって、引き裂かれバラバラになった旧ユーゴ代表たちの今の姿をそれぞれに立場から示して見せたその上で、そーした事態がどーして起こってしまったのか、でもってそれがどれだけ悲惨で悲しいことなのかを浮かび上がらせる、大変の重要な役所が与えられていてこれなら十分に「オシムの涙」と言って良いんじゃないかと思わせてくれた。

 イタリアでのワールドカップの前後からすでに難しい状態にあった旧ユーゴの代表たちが、クロアチアの独立を経てユーロ92へと向かう過程で完全にバラバラになってしまったことについては既にいろんな所で書かれているし、オシム自身もいろいろな所で語っているから大きく目新しい部分はないけれど、そーした文章からでは絶対に伝わらない、映像ならではの表現はなかなかに新鮮。オーストリアのラピド・ウィーンに移籍していたデヤン・サビチェビッチがシュトルム・グラーツを率いるオシム監督に再会した場面で、歩いてくるサニチェビッチの表情が急に笑顔になってカメラを振るとそこにオシムがいて、2人は満面の笑顔で抱き合い挨拶のキスを交わしてその後に、直立するサビチェビッチを相手にオシムが語りかける場面が続いてあのジェーニオですら敬意を示さずにはいられない相手なんだと、改めてオシムの凄さが画面から伝わってくる。

 一般的にはサビチェビッチとオシムって不仲だって言われてて、インタビューでもサビチェビッチはオシムに反抗したことを明かしているけどそれとこれとは別、人間としては尊敬していてオーストリアへの移籍にあたってもどーゆーチームなのかをちゃんと相談していたらしー。だからこその再会時の満面の笑顔。メディアの言うことが決して真実を追究していない現れであり、またユーゴ解体に伴う悲劇の原因にもあげられたメディアを通じてのプロパガンダもまたすべてが真実ではなく、けれどもいったん動き始めたプロパガンダはとどまることなく人心を染め上げ、衝き動かして世界を暗闇へと導く恐ろしさを教えてくれている。ユーゴ解体とその後の紛争ってゆー実例がそこにあるだけに放たれるメッセージは強力だ。

 「オシムの言葉」の著者でもありまたユーゴ事情に詳しい木村元彦さんがチャプターごとに寄せている解説も状況を理解する上でなかなかに役に立つ。「悪者見参」とか合わせて読んでね、ってコメントもあってちょっと端折り過ぎ? って気もしないけどでも読んで欲しい本なだけに仕方がない。あと某辛口評論家に対して90年のイタリアワールドカップでユーゴ代表が、当時はまだセルビアもボスニア・ヘルツェゴビナもクロアチアもモンテネグロもスロベニアもマケドニアも連邦下にあってそこから選りすぐられた選手を集めたチームだったのにどーしてベスト8止まりだったの、指揮してたオシム監督はだからたいした監督じゃないじゃないの、なんて言っていることに対して当時の分離・独立の動きが進む中で選手自信には対立意識はなくても支える周辺からはそれぞれの出身国から対立意識に基づいたのプレッシャーがかかり、落ち着いた気持ちでプレーしづらい状況にあったにも関わらず、そんな選手たちをまとめ上げて24カ国しかまだなかった出場国に滑り込んだ事実をどーして知ろうとしないのか、なんて非難もちゃんと掲げられている。

 ブラジルじゃあ勝たなきゃ首になるかもしれないけれども、当時のユーゴスラヴィアじゃあ選手を使わなかったり試合で勝てなかったりしたら本当に殺されたかもしれない、そんな過酷なプレッシャーを受けながらも選手を守りまとめあげた手腕。あのマラドーナを擁するアルゼンチンを相手に1人少ない10人で戦いPK戦までもつれ込んだ采配ぶり。調べりゃ分かることを調べず「辛口」ぶりと過去の実績からもてはやして重用するメディアに対する違和感を、敢えて解説に書くほど木村さんも腹に据えかねていたんだろー。というかユーゴ問題についていろいろと学び書くということは、メディアが起こした過ちに敏感に成らざるを得ないということでもあるんだろー。その鋭敏さが果たして今のオシムがおかれた状況をどう見ているのか。しばらくそっちから距離を置いている節があるけど木村さんには是非に今のオシムの境遇と、本人が抱くメディア観について聞き出し教えてもらいたい。

 立場につきまとう義務っていうか役割っていうものに振り回される人生が楽しいか辛いかはなかなか判断に迷うところで、それが王様だとか女王様だとかいった現実にはなかなか経験できない立場につきまとうものだったら贅沢行ってないで受け入れそして乗り越えてみせろって言いたくもなるけど、あんまり考えてなかった自分の立場が実はそこそこに重要なんだと気づかされた時にはすでに事態は進展し、巻き込まれてもう大変って目にあっていたりするとやっぱりちょっと待って欲しいと言いたくなる。いやそれもまた楽しいと平々凡々な日々に膿んでいる身には思えてしまうのか。瑞山いつきさんの「マギの魔法使い」(角川ビーンズ文庫、476円)って話の場合はそれなりに名の通った白魔女の曾祖母が亡くなって、やぱり名の通った白魔女の叔母とさあこれからどうしましょうかとやってた矢先に叔母ではなくって見習い魔女の自分が何者かに誘拐されてしまった少女が主人公。

 これはきっと叔母に間違えられたんだと思っていたらどうも違って自分がもっているらしー「宝石」とやらを狙った一味の犯行だった模様。命まではとられないと分かっていたものの不安になって逃げ出そうと思っていたところに今度は山賊が空飛ぶ機械に地上から 迫り乗り移って自分を奪おうとしていることに気が付いた。ヤバいと逃げだしパラシュートでもって降下した先はどっかの畑でそこで少女はウォレスって名の農夫の青年とハルベルトって傭兵をやっているらしー2人組と出会う。元の場所に戻ろうとする少女はウォレスとハルベルトをともない街へと出てそこで黒魔女から放浪の手形をもらとうとしたけれどどうも相手が何だか妖しげ。でもって襲ってきた山賊に誘拐を企んだ一味の間で少女は自分がどういう立場におかれているかを知って驚く。

 それは一国の命運を左右しかねない重大事。でもって迫る世界を統べる存在への候補たち。迷いながらも少女は今はまだ判断できないと言って場を収め、そしてウォレスたちと旅に出ながら自分の行く末を考える。単純な少女の半貴種流離譚的ストーリーに加えて相手となる存在のなかなかな複雑さがあって世界の目新しさに貢献している。こーなるとファンタジーってよりはSF的って言っても良さそうだけれど魔女が主人公ってことでとりあえずはやっぱりファンタジーって扱いになるのかな。続きは新たなる候補の登場とそして戦いってことになるんだろー。楽しみ。イラストの結川カズノさんはなかなかな上手さ。アルフェッカとか可愛いけれども正体を考えるとちょっと複雑。

 厄年なだけに運の総量はえらく少なくなっていて、「コードギアス 反逆のルルーシュ」とか面白いアニメが見られて早くに減少してしまって、そのおかげで居場所のがたつきが止まらないんだけれど(半分くらいは自爆気味なだけかもなあ、どう見ても福田が勝ちそうなのに福田を相手にディスってみたり、選挙で民主党政権に転ぶ可能性があるのに小沢をイジってみせたり。明日は大丈夫か?)そんな残り少ない運を一気に吐き出してしまった模様。普段はライブに通ったりイベントに駆けつけたりしてファンとして見ている時東ぁみさんが登場するイベントに取材として入り込んでは目の前でそのご尊顔を愛でる機会を頂戴できて、今年はこれからもう絶対に良いことなんてなんだと思わせられるくらいの幸福を感じまくる。

 メガネをかけた妹分とか姉貴分を募集するオーディションの第2回目で、今回からメガネスーパーが特別協賛することになって企業絡みだってことで堂々とお出ましできた訳。んでもってまずはぁみにぃのライブがあって「発明美人とパインナッポー」とか「センチメンタル・ジェネレージョン」とか名曲を目の当たりにしてそれから、次代のメガネっ娘がいよいよ登場。その名も何文櫻(かふみおう)って女性は19歳の大学生で福建省で生まれて7歳から日本にいるってゆーから華僑か何かのお嬢さん? 161センチくらいある長身はスレンダーだけれどもとりあえず出るところは出っ張っていて、何より眼鏡が可愛くってこれならなるほど合格しても不思議はないと納得させる。あとつんくさんのことだけにプロフィルに直感を覚えたのかも。アジア戦略とか外人助っ人パワーとか。

 本当に目が悪いらしくって眼鏡は欠かせない模様でメガネスーパーから1週間分の眼鏡、ってことは7本分? 分からないけどもらってちょっと嬉しそう。あとはぁみにぃのコンサートにも登場するみたいで8月に渋谷であったライブに登場した1回目の合格者の人みたく、遠からずライブの場に出てきて何かを歌ってくれることだろー。イベントとかはいつあったっけ、年末とかにコンサートなんて予定されているんだっけ、調べてみようっと。そんなお披露目のあとに登場したフォトセッション時のぁみにぃは腰もあらわな新しい衣装でなかなか以上のセクシーさを発揮していて、歳は下なんだけれども大人の魅力を醸し出してた何さんに早くも強烈な対抗意識? を燃やしてた? いやいやそこは大人の余裕、先進眼鏡っ娘として発展途上眼鏡つ娘を引っ張りながらも更なる高みを目指していってくれるだろー。ねらえ紅白歌合戦。


【9月16日】 ちょうど20年前に教育実習をやり終えた直後の今頃ってすでに名古屋でだって涼しさが漂い始めて夜なんて長袖のシャツじゃなきゃあ寒かったのに今じゃあ半袖だって暑すぎて寝てられないくらい。これが温暖化というのか単に部屋の換気が悪くてハードディスクレコーダーとかAVアンプから出る熱が逃げていかないだけなのか、迷うところではあるけれどもとにかく暑さでまだしばらく夜も眠れない時期が続きそう。その代わりに昼間寝るから良いんだ。