アンデパンダン展
展覧会名:第49回アンデパンダン展
会場:東京都美術館
日時:1996年3月2日
入場料:700円



 「アンデパンダン」、略して「アンパン」。別に袋に入ったシンナーじゃないけれど、脳みそを破壊する力は、もしかするとシンナー以上かもしれないね。

 かのアンリ・ルソーを輩出したパリのアンデパンダン展は、ルソーのように下手くそだと思われていた画家でも誰でも、自由に出品できた無審査の展覧会として、今に語り継がれている。玉石混淆といえば聞こえがいいが、玉など多分、ほんのわずかに過ぎなくて、永遠に助走し続ける、自称画家、自称アーティストの高校美術部のような作品が、ただ無作為に並べられている、金を払う価値などない展覧会だと思っていた。

 東京都美術館で開かれている「第49回日本アンデパンダン展」に行こうと思ったのも、某ネットワークの常連の人が、インスタレーションを行うからと呼びかけていたからで、未来のルソーを探そうとか、磨けば光る玉の輿に乗ろうとか、そんな気持ちは一切なかった。

 会場内にはやはり、石がごろごろと転がっていたけれど、意外に玉が多くて驚いた。例えば李晟輔氏の2枚の絵は、白いカンバスの地の色の上に、墨のような黒い絵が描かれてるだけの絵だが、その存在感たるや、部屋の中を圧倒していた。「線と線の間」は、赤い2本の線が墨絵の張り詰めた画面に、衝撃を与えている。「■」は、2本の黒い柱が、バックの白に栄えて圧倒感を与えていた。

 浮世絵の「日本橋」の手前に、積み重なる死体の山が描かれた三好秀憙氏の「巡歴」には、日本の犯した罪が表現されていた。彫刻では韮塚作次氏の「縄文」と「風が通る」に目が行った。素焼きの陶板を円筒形に積み上げた「縄文」は、遠藤克利氏の円環シリーズにも似た存在感があった。

 予告にあったインスタレーションを待っていると、女性2人と男性1人による舞踏が始まった。ウエディングドレスを来た女性が1人、歩いて来る。別方向からは、首のないウエディングドレスを誘って、フォーマルスーツの男が登場する。呼応するかのように踊るウエディングドレスの女。1つのドレスを交互に来て踊るシーンを経て、レオタード姿になって飛び回る女たちの間で、滑稽な動きでさまよう男は、いつしか2人の女から見放され、ドレスにくるまって息絶える。

 ボディコンとスーツに着替えた女が、男の横ですれ違い、立ち去ろうとする刹那、スーツの女が振り返って、男の跡から玉を授かりエンド。女性の引き締まったボディがいいのはもちろん、滑稽なダンスを見せた男が、パフォーマンスの要となっていた。男が下手だったら、ここまで締まらなかっただろう。途中、CDの入れ替えなんかを後ろでこそこそやっている姿は貧乏くさかったけど。

 インスタレーションの笠木組は、6人ほどで4枚のビニールシートに次々とペンキを塗りたくっていくもの。最初のルオーが次の瞬間ジム・ダインに変わったり、色の効果が目前で確かめられたりと、見ていて飽きないインスタレーションだった。

 それにしてもパフォーマンスを演じた2人の女性。小柄だったけど、色白でスレンダーで引き締まってたなあ。


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