moon river
あまのがわって、みたことある?
東京とか、都市じゃ見られないほんとの天の川。
きれいだよね。
ああ、宇宙ってせまいんだ、星と星が、ぶつかりそうになりながらいるんだ、って思うよね。
で、ムーンリヴァー。
ムーンリヴァーって、どんなだか知ってる?
ムーンリヴァー、月の川。
よくわかんないけど、天の川みたいなもんじゃないのかな、って漠然とおもってるひと、なかにはいるんじゃないのかな。
って、ぼくもそうだったのだけれども。
すごくきれいなムーンリヴァー、見たことあるよ。
その時はそれをそういう名前でよぶっていうことをしらなくって、ただ凄いな、って思ってたのだけれども、そういう凄いものって、やっぱり名前がつくんだよね。
あっ、まだわからないね。
ぼくが月の川を見たのは、今でも覚えてるけど、学生だった頃。
結構厳しい先生の厳しいレポートを、めずらしく締切日の一日前に終わらせて、みんなが苦しんでるだろうときに、他の学校の友達を誘って当てのない深夜のドライブに出かけたんだ。
免許をとってまだそんなにたってなくって、車も今のじゃなくて、燃費のいいのだけが自慢のボロい車だったんだけど、トリップメーターを回すのが楽しくて楽しくて、そういうドライブをよくしてた。
その日は結構ご機嫌で、出来たばっかりのベイブリッジにあそびにいって。
帰りに首都高を降りて16号で帰ろうとしたら、いつのまにか15号に出て、それでも走ってたら、またまたいつのまにか1号に出て。
「いっか、15+1は16だし」
とかわけわかんないこといいながら、それでも引き返すなんてしないで前進を続けて。結局箱根までいっちゃったんだけど。
夜もふけてきて、そろそろ帰らないとあしたの一限の実験に間に合わないなあ、なんて思ってきたんだけど、引き返すきっかけもなかなかないまま峠道を上っていって。
カーブを抜けたとたん、あったんだ。それ。
とつぜん目の前にあらわれた芦ノ湖のなめらかな水面に、そろそろ真上にいるのをやめて降りかけようかな、っていうまんまるお月様が、ほそながく映って。風もないのに静かに揺れていたよ。
水面に映る月の川。
もちろん、上には本物のお月様がいて。
それが月の川、ムーンリヴァー。
その景色ももちろんなんだけど、ムーンリヴァーっていうことば、なんか、きれいだよね。
でも、日本語でなんていうんだろう?
そうそう、どうでもいいんだけど、このときのドライブののナビは、女の子ではありませんでした。いちおういっとくよ。やきもちやきが多いからね、ここの読者って。
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