祭りの後 '98 SUZUKA




 終わったね。
 勝負の世界に、もしも、っていう言葉はないってわかってるけど。結果がすべてだ、ってわかってるけど。
 でも、すごかったよ。

 たぶん、ぼくが鈴鹿に見に行ってたら、スタートの段階で帰って来ちゃって、そして、帰っちゃったことを、一生悔しがるんだろうなあ。


 もう一度おさらいするとね。最終戦の鈴鹿。四点差で逆転をねらうシューマッハー。なんとフェラーリコンストラクターズチャンピォンの可能性まで残してた。
 予選、シューマッハー堂々のポールポジション。二位、三位はマクラーレン。

 そして、決勝。スタート一回目、黄旗やり直し。スタート二回目、黄旗やり直し。原因はシューマッハー。
 エンジンをストールさせたシューは、最後尾からのスタート。

 予選でぎりぎりの勝負をしてやっともぎ取ったポールを、自力優勝はない段階での一縷の望みを、いとも簡単に、無惨にうち砕いたエンジンストール。ふつうなら、ここで投げちゃったっておかしくない。いや、いくらシューマッハーだって、投げたって誰も責めやしない。

 でも、違った。
 スタートで5台くらいぶち抜いたシューマッハーは、狂ったようなスパートで、なんと、二十周もしないうちに三位にまでつけた。二位はアーバイン。
 どういうことかっていうと、楽勝だと思ってたミカが、どういう拍子にかミスをしてリタイアすると、シューがワールドチャンプになる可能性がでてきたってこと。

 もちろん、タイム差は30秒近くあったから、直接のバトルとかそういうんじゃないけど、でも、なんかの拍子にセイフティカーがでたりとか、なんかでいとも簡単に差がなくなってしまうところまで、シューは来た。

シケイン不通過もした。
内から外からの強引な抜き方も、
シューだから、この状況だから、って許してもらったりもした。

でも、シューは来た。

 ひとつき見続けた、他人任せの栄冠の行方。きのう、やっと少しでも近くに引き寄せた。
 それが、二度目のスタートで、遠のいた。遥か彼方に。見えないくらいに。

でも、シューは来た。

 勝利の女神が、二度ともシューを蹴飛ばしたのか、タイアがああなるまで、シューが無理をし続けたのかは、知らないよ。

 でも、えふわんって、人間のたたかいなんだ。スポーツなんだ。

そして、シューマッハーは、最高の選手だよ。

 そのシューに勝ったミカ。胸を張っていいよ。すごくいい一年だったよ。

 歴史に残る一年を、最後まで闘い通した、シューマッハ、ハッキネン。そして、マクラーレン・メルセデス、フェラーリ。そしてそして、グッドイヤー、ブリジストン。

みんな、かっこよかったね。

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