e. ハード・バップの誕生日 その2
僕が更新をさぼっている間に、アクセスカウンタが5000を超えたんだね。皆さんありがとう。
さて、ハードバップの誕生日のはなしだね。彗星のように現れたトランペット・センセーション、クリフォード・ブラウンがハード・バップという「新しい」音楽の火蓋を切ったちょうどそのころ、それまでの一大ムーヴメントであるビ・バップからハード・バップへと、音楽を「変革」したトランペッターがいるんだ。
そう。ご存じ「帝王」マイルス・デイヴィス。これから40年にも渡って常に音楽を変革させ続けたマイルスが、初めて自分のスタイルで作った音楽が、このハード・バップ。っていうと怒られちゃうかな? でも(1950年に提唱した)クールって、一大ムーヴメントにはならなかったもんね、ね、っね。
というわけで、ハード・バップのもう一つの誕生日は、1954年4月29日。輝かしい幕開けを告げたもう一つのアルバムは.
Walkin' / Miles Davis all stars。
オールスターズってなんや、って思うだろうけれどもね。これは、Presitigeっていうレーベル(レコード会社のことね)から発売されたアルバムなんだけれど、このレーベルは「適当にミュージシャン集めてきて、スタジオに入れて半日間で、はい、アルバム一丁できあがり」っていうスタイルの作品が多くって。俗に言うセッションものね。
だからこれもセッションもののひとつなんだけれども、その顔ぶれはホントに豪華。J.J.JohnsonのトロンボンやHorece Silverのピアノ。パーシー・ヒースとケニー・クラークのリズム隊。いいなあ、ゾクゾクしちゃう。
このアルバムは、レコードで持っているのだけれども、この一年くらい、何回もターンテーブルに乗ってるんだよね。ある時はA面だけ、またあるときはB面だけ、って。なんでかっていうと、この原稿を書こう、とするたびに聞き直すんだけれども、どうやって書こう、って思ってるうちに時間が過ぎて、ってことを繰り返してたんだよね。ごめんなさい。
さて、演奏なんだけれど。
高校生の頃に、これがハード・バップだって言われて聴いた僕は、かなり混乱したんだよね。特にタイトルチューンのWalkin'なんかそうなんだけれども、茫洋としたジャム・セッションのブルースで、全然ハードじゃない。ゆっくりとしたテンポで、マイルスのJ.J.のソロがのんびりと続く。
そう、ハード・バップはハードじゃないんだよね。ディジーやバードのビ・バップの方が傾向としては攻撃的なんだと思うよ。
じゃあ、ハード・バップってなに、っていわれると、困るんだよね。特にこのアルバムを聴きながらだと。でも、これはやっぱりこれはビバップではあり得ない。ひとつは、LPの普及によって、演奏時間が延びたことがあるよね。13分以上の曲なんて、40年代には考えにくいでしょ。こういう、曲が長くなってくると、スタープレイヤーのアドリブ一発ではなかなか客がついてこなくなって、合奏やら編曲やらで曲にメリハリを付けようとした、のがハードバップなんだ、と思ったらいいかと思います。
それにしても、ハード・バップ以降、唄もののソロをあんまりとらなくなるマイルスの、こういう呑気なソロって、やっぱいいなあ。
遅く起きた日曜の昼に、レースのカーテンから差し込む日当たりにのんびりくつろぎたいとき、是非聴いてみてね。
次回(いつになるかはわからないけれどもね)は、短命に終わったハード・バップの命日、その1の予定です。
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