誇り高きエフワン戦士たち '05


 今年も、F1が始まったね。
 F1っていうのは、技術の進化で速くなろう、速くなろうっていう車を、ルールで縛って遅くしよう、遅くしようとしている世界なんだけど、今年のルール変更はちょっと大きいね。

 どんなのかっていうとね。

 その1。予選からレースまで、タイヤ交換禁止。
 去年までは、レース中、ガソリン入れながらタイヤを交換してたからね、タイヤの耐久距離はだいたい100km位で良かったんだけれども、今年は予選からレースまで、一切交換禁止だからね、タイヤの耐久距離は大体350km位なのかな。一気に何倍にもなった。
 その2。エンジン交換は、2レース毎。
 その昔は、予選と本戦で変えていたエンジン、去年くらいは予選から本戦まで1エンジンだったんだけれども、今年からは2レース同じエンジンを使わなければいけないルールになった。これまでは350km持ってくれれば良かったエンジン、それが700km持たないといけなくなった。
 その3。予選は2回のラップタイムの「合計」で順位が決まるようになった。
 こういう変更によって、何が起こるのかはこれからも観て行かなくちゃいけないんだけど、とりあえず第1戦を見た限りではね。

 最初の1,2の変更で、タイヤを大事にしないヒトはレースの間中呪われて、エンジンを大事にしないヒトは次のレースまで呪われることになった。
 だからだと思うんだけれどもね、なんかあっさりなんだよね、レースが。抜きつ抜かれつがあんまりなくって、タイヤに優しく、エンジンに優しいレース。
 魂のサイドバイサイド、なんていわれたコーナーのせめぎ合いっていうのがあんまり観られないレース、面白いのかな?
 それから、その3の変更ね。初戦の予選1回目っていうのは、1時間の間で雨降ったり乾いたりして、運によるタイム差が4秒以上もついた。琢磨なんかはスピンアウトだしね。
 そうすると、例えば首位から4秒差のシューマッハやタイム無しの琢磨は、2日目で挽回できないからって、予選を休むんだ、2回目の。おまけにエンジンも換えたりして(エンジン公開は予選順位10位降下のペナルティだけれども、どうせ予選棄権だから一緒だもんね)。
 一発勝負の緊張感の薄れた予選、どうなんだろうね。

 もちろん、そんな中でのルノーの速さとか、バリチェロのがんばりとか、2戦目に向けたエンジン戦略とか見所も多いんだけれどね。これからに期待だね。

 今回はそういう話じゃなくってね。
 僕がたまに読む唯一のスポーツ誌NumberがひさびさにF1特集でね。それを読んでてひさびさに鼻がツンときた。
 ああ、F1ってなんて、誇り高いスポーツなんだろう、って。
 もちろん、モーターレースでは世界最高のカテゴリーだし、五輪、サッカーW杯と並んで3大スポーツイベント、しかも毎年やってるんだし。選ばれた超エリート集団のプライドが高いことは当然なんだけれどもね。
 今回目についたのは、クルマ屋の誇り高さ。もちろん日本の雑誌だから、日本のメーカーの特集なんだけれども。

 例えばね。
 ニューマシンの開発が思うように進まない本田曰く、
「でも、最後は帳尻合わせるんです、ホンダだから」
 って。俺たちは自分が成功することを知ってるよ、だって俺たちはホンダだもん。こういう誇りを持てる会社に、プロジェクトにいられるって、本当にいいなあ。もちろんそのプライドを持ち続けるには自分で結果を出す以外には無いんだけれどもね。その覚悟を含めてね。

 同じことがトヨタにもいえて。
 今まで満足な結果を残せていない4年目のトヨタ曰く、
「3年で結果が出るほど、F1は甘くないですよ。そんなに簡単に勝てるカテゴリーだったら、わざわざトヨタが会社をあげて参戦する必要なんかない」
 国内の、業種を問わず他のメーカーがいったらね、ただの戯言なんだけれど。これぞ大トヨタの意地と誇り。そしてたぶんそれを裏付ける努力と戦略。

 ドライヴァーは、シューマッハー兄を除いてはそんな大きなプライドを持てない(って持ってるだろうけど)状況で、でもたぶん自動車メーカーはそれぞれの誇りを秘めて働いてるんだろうなあ。
 もちろん、それは結果でしか誇ることが出来ない物なんだけれどもね。
 そういう意地と意地のぶつかり合い。やっぱり今年もちゃんと観ようっと、エフワン。

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