“名もなきアフリカの地で” ★★★
NIRGENDWO IN AFRICA
(2001年ドイツ映画)

監督・脚本:カロリーヌ・リンク
原作:シュテファニー・ツヴァイク
出演:ユリアーネ・ケーラー、レア・クルカ → カロリーネ・エケルツ

 

心に染み入るような映画でした。
良い映画について語る言葉は何も要らない、そんな思いです。

ストーリィの始まりは1937年。ドイツでナチスが台頭し、ユダヤ人への差別が始まった頃。ドイツ国籍のユダヤ人家族の物語です。
少女レギーナの父親・ヴォルターは弁護士、祖父はホテル経営とドイツでは裕福な一家。しかし、ユダヤ人への迫害の高まりに父親は危機を感じ、いち早くアフリカに渡り、妻のイエッテルと娘のレギーナを呼び寄せます。
イエッテルはドイツでの裕福な暮らしを忘れることが出来ませんが、アフリカの暮らしは、雇われの農場経営者で、家も粗末な一軒家。
何故こんな土地に来なくてはならなかったのかと思うイエッテルと、アフリカの地にすぐ馴染んでいくレギーナの姿が対照的。
そして戦争が勃発し、一家は収容所へ、解放されて再び農場経営へ、ヴォルターは従軍へと変遷を重ねるにつれ、夫婦の立場は逆転し、むしろイエッテルの方が覚悟を決めたようにアフリカの大地に居ついていく。

国を捨てた夫婦の自分達の居場所への思い、環境が変わった故の夫婦間の葛藤、こだわりなくアフリカの土地と人々に馴染んでいく娘、3人それぞれの姿に胸打たれます。
映画の中では、料理人という立場ながら一家を支えるかけがいのない存在として、カルオ族のオウアという登場人物が忘れられません。一家3人の思いは、そのままオウアとの距離関係によって表されています。

やがて一家には、ドイツを離れた時のように、再びアフリカを離れる時がやってきます。しかし、その約10年の間にアフリカの土地が3人にもたらしたものはとても大きい。おおらかなアフリカの大地がとても印象的です。
静かな感動をいつまでも伝える映画。忘れることの出来ない名作と言って過言ではないでしょう。

なお、レギーナは、少女時代と10代で配役が変わります。幼女時代のレギーナの方が可愛らしく印象的なのは、まあ当然のことでしょう。

※アカデミー賞最優秀外国語映画賞他

2004.07.31

 


  

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