“ロスト・イン・トランスレーション” ★★☆
Lost In Translation
2003年アメリカ/日本映画)

制作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ、フレッド・ルース
監督・脚本:ソフィア・コッポラ

出演:ビル・マーレー、スカーレット・ヨハンソン

 

監督のソフィア・コッポラ自身の東京での体験をもとに書いたドラマとのこと。
ウイスキーのCM仕事のため米国から単身で東京にやってきた人気俳優のボブ。カメラマンである夫に同行してきたが、ホテルに一人放って置かれている若妻シャーロット。2人とも東京で孤独感、疎外感を味わいます。そしてお互いに同じ思いを味わっていることに気づいた2人は、次第に気持ちを通わせていくというストーリィ。

舞台は東京ですけれど、同じ東京であっても外国人から見るとこんな風になるのか、という納得感があります。ちょうど、日本人が韓国のソウルへ行って撮影するとこんな感じになるのではないでしょうか。
旅行先で孤独感、疎外感を感じたことは私にもあります。若い頃一人でヨーロッパの都市を観光して歩いたとき、とくにパリの夕食時に感じさせられました。また、大阪で単身赴任していた時にも同じ思いがあります。要は、その土地に溶け込めていないことに自分で気づいてしまうのです。
画面に映し出される東京の様子、我々が見る東京との違いはそこにあります。

紹介文にはコメディとありましたが、そんな感じはしないなぁ。
むしろ地味な作品で、楽しいというような作品ではありません。でも、孤独感にさいなまれ、不眠に悩みながらもそれに堪えている様子、2人が思いを共有して徐々に孤独感を癒していく様子、その繊細な運び方に惹かれます。私としては好きですね、この作品。
また、外国人から見た東京の姿という点にも興味あり。ちょっとズレているところがありますけど、そんなものでしょう。

ビル・マーレーというと賑やかな俳優というイメージがありましたけれど、本作品の渋さもまた好い。また、シャーロットを演じるスカーレット・ヨハンセンの初々しい雰囲気も素敵です。
最後、ボブは仕事を終えて東京を去ろうとしますが、シャーロットはまだ東京に残ります。その2人の別れのシーンが素晴らしい。お互いに癒しあった気持ちを確認しあうかのようで、ことにボブのシャーロットに対する優しさが強く感じられます。
2人の別れ、別れた後のシャーロットの後姿、ちょっと忘れたくないシーンです。
地味ですけれど、質の高い作品です。

※本作品は、2003年アカデミー脚本賞を受賞したほか、主演のビル・マーレーはゴールデングローブ賞・全米批評家協会賞等の主演男優賞を受賞。

2005.03.08

      


  

to 映画note Top     to 最近の映画 Index