“コーラス”★★
LES CHORISTES
(2004年フランス映画)

監督:クリストフ・バラティエ
脚本:クリストフ・バラティエ
出演:ジェラール・ジュニョ、フランソワ・ベルレアン、ジャン=バティスト・モニエ、キャック・ベラン、マリー・ブネル

 

合唱を通じた少年達と音楽教師との心の交流を描いた感動ドラマということで観た作品ですが、それにしても地味な作品。
この地味さ、いかにもヨーロッパ映画らしいといえるのですが、アメリカ映画ばかり観てしまうとちょっと戸惑うところもあります。

ストーリィは、1949年のフランス片田舎にある、“地の底”と名づけられた寄宿制の学校が舞台。
寄宿制といっても、生徒たちは素行に問題があったり家庭に問題があったりという事情を抱えた問題児ばかり。ですから、校長は性質の悪い生徒を処するには懲罰をもって行うだけという、利己的な考えの持ち主。
そこに新しい舎監として雇われたのが、音楽教師のクレマン・マチュー。
マチューは生徒たちに誠意を持って対したいという考えの持ち主で、皆から見放されているようなここの生徒たちにも歌声があることを知り、合唱を通じて生徒達を導いていこうとする。
アメリカ映画だったら、理想に燃える音楽教師、感動的な展開、晴れやかなフィナーレを配するに違いないと思うストーリィなのですが、呆れるほど地味。
マチューは理想に燃える教師でもとりわけ人格者でもありませんし、感動的な展開も、晴れやかなフィナーレも用意されていません。マチューが合唱を指導するようになってすぐに成果が現れてしまうという展開には、こんなに簡単で良いのだろうかとさえ思ってしまいます。
でも、それで良いのかも。合唱を通じて、まっすぐ生徒に向かい合う教師、そして真摯に教師に向かい合う生徒の姿がそこに生れたのは間違いないのですから。

最後はハッピーエンドというよりちと寂しさを感じさせられる幕切れですが、その分切実感があります。
挫折を繰り返してこの寄宿学校に辿り着いた後も、生徒の母親にふられたり、最後は首になったり。成功を勝ち得るタイプの人物ではなかったけれど、地道に自分の道を生きたマチューという音楽教師に、人間味と親近感を抱きます。

なお、本ストーリィは、マチューに音楽的才能を見出され、現在世界的な指揮者となったピエール・モランジュが、当時の仲間・ペピノの訪問を受けてマチューのことを回想するという構成。
少年時代のモランジュは演じる新人
ジャン=バティスト・モニエは、本作の合唱を担ったサン・マルク少年少女合唱団で実際にソリストを務めているそうです。痩せて神経質そうな外見はモランジュという役柄に相応しいと言えるのですが、(申し訳ありませけど)あまり可愛くない。

2006.01.03

      


  

to 映画note Top     to 最近の映画 Index