“シティ・オブ・エンジェル”★☆
City of Angels
(1998年アメリカ映画)

監督:ブラッド・シルバーリング
主演:ニコラス・ケイジ、メグ・ライアン

 

メグ・ライアンにしてはちょっとシリアスなラブ・ストーリィです。
天使が人間の女性に恋をしてしまうというラブ・ストーリィで、普通なら楽しくユーモラスな作品になりそうなのですが、本作品はまるで違います。
まず、天使の姿が違う。あの、普通に思い浮かべる、白い服、白い翼ではありません。全身黒づくめの長いコートのような服。そして、人が死ぬ時その傍らに現れ、天国への付き添い役を果すという、まかり間違えると死神としか思えない。しかも、風に吹かれたり、ものに触れる感覚を一切もたない、少女に言わせると「天使ってつまらないのね」と言われるような存在。そんな天使が大勢、図書館に住み、朝夕そろって海岸に佇みます。
そんな天使の一人、セスが女医マギーに恋してしまう、というストーリィ。セスが連れに来た相手は、マギーが手術したばかりの人間。懸命に人の命を救おうとするマギー、その涙を流す姿に、セスは一目で恋してしまいます。
全体的に薄暗く、幻想的なイメージが常につきまとっている。見ていても不思議な感覚を覚えます。
マギーがセスとの愛から自信を取り戻した時、更にマギーとの愛を選んだセスが地上に落ちて人間になった時、画面が急に明るくなります。役者の演技以上に、カメラワーク、構成に凝った作品です。他作品では感じない部分で、強く印象に残ります。
最後は途中から予想された結末になるのが残念ですけれど、ストーリィとは別の魅力がこの作品にはあります。それは、高みから見下ろすロサンゼルスの街、そして郊外の景色。天使の視点という発想なのでしょうが、とても新鮮です。
楽しいというストーリィではありませんが、その高みからの俯瞰だけでも、充分見る楽しみのある作品です。

途中、ヘミングウェイ「移動祝祭日」という作品がキーになっているのが嬉しいところ。春は必ず訪れる、という文章が引用されています。

2001.08.19

 


  

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