“アバター” ★★☆
Avatar
(2009年アメリカ映画)

監督:ジェームズ・キャメロン
脚本:ジェームズ・キャメロン

出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、ラズ・アロンソ、シガーニー・ウィーバー、ミシェル・ロドリゲス

 

軍隊生活で下半身不随となった元海兵隊員のジェイク・サリーは、急死した兄の代わりに地球を遥かに離れた惑星バンドラにやってくる。
人類には有毒な大気に覆われたこのバンドラに何故人類が進出しているのかというと、稀少資源である鉱物を大量に蔵しているから。
しかし、問題は先住民のナヴィの存在。そのナヴィを懐柔して鉱物採掘の邪魔をさせないようにと立てられた計画は、ナヴィと人間のDNAを掛け合わせた肉体“アバター”が創造し、そのアバターに人間の意識をリンクさせてナヴィ族と交流させ、ナヴィ族の秘密を探ろうというもの。
ジェイクはそのアバダーの操縦士の一人となり、リンクされた後はナヴィ同様の身体をもち、ナヴィ族の中に入り込んでいくというのがストーリィの冒頭部分。
しかし、森と共生し全ての生命を慈しむナヴィ族の生き方・考え方を学び、
ナヴィ族の王女であるネイティリとの恋に落ちたジェイクは、ナヴィ族を下等な生物と見下しバンドラの自然を蹂躙して破壊することに何の疑問も覚えない人間たちとの板ばさみとなり、苦悩を深めていくというストーリィ。

SF、宇宙人というと、大抵は宇宙人が地球に対する侵略者であり、人類は守る側であるというストーリィですが、地球人が侵略者であるというのは珍しい。
まして自然の中で他の生き物と共存する生き方をするナヴィに対し、大量の殺人兵器と大型土木機械を駆使してバンドラを蹂躙していく人類は、完全な悪役に間違いない(一部の良識的な人間を除いて)。
そしてこれは、何も空想ストーリィではなく、人類の歴史の中で何度となく繰り返されてきたストーリィであるという点が、注目すべきところ。
北米大陸におけるインディアンと白人の関係、日本におけるアイヌと大和民族の関係、南米におけるインカ帝国と侵略者であったスペインの関係等々、数限りありません(ナヴィ族が様々な部分でインディアンを彷彿させるのは決して無縁ではない)。そして、その結果がどうなったかというと、現在の地球は自然が破壊され、温暖化、環境汚染が進んでいるといった状態。
まさにこの物語は、人類に対する警告、というメッセージを含んでいます。
最後、バンドラを挙げて闘うナヴィたちが人間の軍隊に打ち勝つという結果を見て、爽快な気分、溜飲を下げた気持ちになったのは、私だけでしょうか。

そうしたストーリィを別にして、地球と異なる惑星バンドラの描写がお見事。
鳥に似た生物を駆って大空高く舞うナヴィ族の姿、空高く聳える巨大な樹林、空中に浮かぶ数多くの岩山といった風景は中国で有名な桂林以上に美しく、素晴らしく、見応えがあります。
3Dで観たらさぞ見応えあったろうと思うのですが、残念ながら近所のシネコンで観たので3Dは味わえず。
それでも上映時間は3時間近くに及び、ストーリィ・映像とも見応えたっぷりの作品でした。

※なお、主人公のジェイク役サム・ワーシントンは、人間とアバターの2役を演じるのでどんな俳優か判るのですが、ネイティリを演じた女優のゾーイ・サルダナ、ずっとナヴィ族の顔・姿なのでどんな女優さんか全く判らず。と思ったら、「スター・トレック」でウフーラ役を演じていた女優さんでした。
ナヴィ族に扮していても表情はいろいろに演じられていて、こうした扮装技術も見事なものだと感じ入った次第。

2009.12.26

3Dで再び見てきました。
昔、立体カメラで撮った写真を見たことがありますが、3D映画も最初の印象はそれに似ているなというもの。画面が前と後ろという二重になっている感じ。それでもおぉさすが立体だなと感じる場面が幾つかありました。特に高いところからはるか下を見るところ、空を飛翔して回る場面、高所恐怖症のおかげで3Dの迫力を感じることができました。
でもそんな部分はほんの幾つかの場面に留まります。ストーリィに熱中してみていれば、そう一般映画も3D映画も変わりなし。見応えが優る、という訳でもありません。

2010.01.01

       


  

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