“リトル・プリンセス〜小公女〜” 
A Little Princess
(1995年映画)

制作総指揮:アラン・C・ブランクィスト、エイミー・エフロン
監督:アルフォンソ・クアロン
原作:バーネット

出演:リーセル・マシューズ、リーアム・カニンガム、エレノア・ブロン

 

秘密の花園」が良かったので、他のバーネット作品も観てみたいと思ったところ在ったのが、この作品。でも、結果的にはイマイチ。
その理由は、原作の重要部分と思われる部分が変えられていること。
原作でセーラの父親は熱病で死に、最後にセーラは亡き父親の共同経営者の手によって苦境から救い出されるというものでしたけれど、本映画では戦場で行方不明になったという設定。
もうひとつ、もっと重要と思われるのは、本映画における主人公・セーラと寄宿学校の校長・ミンチン女史との対立軸。夢を抱くことは大切とセーラが信じているのに対して、ミンチン女史は冷酷な現実を直視しろという現実主義者。そもそもそこに、2人の反目しあう原因があります。
ミンチン女史のそうした性格は、少女の頃父親に愛されることがなかったという生い立ちにより形成されたものらしい。

原作にこうした対立軸はなかった筈です。セーラが“公女”を理想としたのは、他人に対する慈しみの心を忘れない、ということではなかったか。また、それに対するミンチン女史は、世間一般にありがちな狭量な性格の人物というだけのことではなかったでしょうか。
まぁ、この違いは、原作の設定そのままでは現代に受入れられ難いという面があった為でしょう。原作のインドのダイヤモンド鉱山所有という話は植民地からの搾取という問題点が浮上するでしょうし、“公女”という概念は階級意識を是認
するものでしょう。
その結果として、セーラという主人公の輝きが薄くなってしまったことは否めません。しかし、これは仕方ないと思うべきでしょうか。ただ、幕切れの、ミンチン女史が煙突掃除の助手に身を落としたというオチはいただけません。

 
2004.12.27

      


  

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