“カルメン故郷に帰る” ★★
(1951年日本映画)

監督:木下恵介
脚本:木下恵介
出演:高峰秀子、小林トシ子、坂本武、磯野秋雄、佐野周二、小沢栄、笠智衆、佐田啓二

上映時間:86分

     

国産初の「総天然色映画」として公開されて話題を呼んだ作品。
ただし内容はコミカルなもの。
浅間山麓にある村が舞台で、ほぼ全編がロケ撮影。その村に、東京に出て行ったきりの娘おきんが、牧場管理人をしている父親と姉の元へ久しぶりに帰ってきます。
その直前に届いたおきんの便りには、東京でリリー・カルメンという名で踊り子として有名になった、ついては故郷に錦を飾るため帰ってくる、とあった。彼女を迎える側の学校長たちは、おきんを芸術家、文化を村に運んでくると信じて疑わない。
ところが、踊り子といっても事実はストリッパー。その勘違いから生じる村での騒動がコミカルに描かれます。

父親や校長ら良識ある村人たちと、おきんとそのストリッパー仲間の意識、事実のズレが本作品の根底にある面白さです。
おきんは自分たちの踊りを芸術と信じて少しも疑わないのですが、父親に言わせれば裸踊りに過ぎず、親として恥ずかしくてたまらない。
双方にそうした大きな食い違いがあるのですが、それでもお互いの間に愛情のあることがきちんと描かれている点が、単なるドタバタ喜劇に終わらない、本作品の良さです。
父親はバカな娘だけれど実は可愛くて仕方ないといい、おきんは父親のために尽くしたいと金を残していく。
おきんの帰郷はバカげた騒動を巻き起こしただけでしたが、それでも彼女の帰郷は何かしら良い結果を残した、というのが後味の良さをもたらしています。

本作品で高峰秀子は主役のおきんを演じると共に、主題歌も歌っています。
本作品の前に見た4作とは全く異なる役柄で、作品の中で見せる表情もまるで異なります。真面目な顔で裸踊りを踊っているシーンもそれはそれで愉快。
まさに高峰秀子のうまさが光っているという役柄で、高峰秀子演じるリリー・カルメンのいろいろな表情を観ているだけでたっぷり楽しめます。

コミカルであるのはストーリィのことであって、作品自体は木下恵介監督らしいもの、観応え十分です。

2012.02.25

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