“笑の大学” ★★☆
(2004年日本映画)

監督:星 護
脚本:三谷幸喜
原作:三谷幸喜
出演:役所広司、稲垣吾郎

 

太平洋戦争直前の昭和15年、厳格な警視庁の検閲官と喜劇作者とが1冊の台本をめぐって7日間にわたって繰り広げる、1対1の人間ドラマ。

堅物の検閲官・向坂睦夫は次から次へといちゃもんを付け、上演を諦めさせようとする。それに対し、劇団“笑の大学”の若い座付作者である椿一は何度も検閲官の無茶な注文を受け入れたうえで、さらに笑いの要素を高めていく。
そんな繰返しによる7日間のドラマ。
いつしか向坂検閲官も、笑わせ処が納得いかない等々と、作者の椿と一緒になって台本の質を高めようという姿勢に変わっていってしまう。
その辺り、2人の緊迫感とユーモア、そして検閲官の姿勢の変化が絶妙で、とても見応えがあります。
ただ、単に2人が仲良くなって出来の良い喜劇台本を作り上げるだけでは面白くない。2人の間に再度の緊張感をはらませ、真剣勝負にもっていくのは6日目の終わりの僅かな時間。
そして最後の7日目に至って、これまでの2人のぶつかり合いがすべて納得でき、将来に希望を繋ぐ形で収斂する。この展開は実にお見事。

戦時下だからといって、何故“笑い”を庶民から取り上げなくてはいけないのか。“笑い”は如何に人間を幸せにするものか。
“笑い”の大切さを主張するとともに、“笑い”を取り上げようとするような戦争だったからこそそもそも間違いだったのであるという主張が、本作品にはこめられているような気がします。
モリエール劇の訳者である鈴木力衛さんの「日本人にはモリエールの笑いが必要である」という言葉を思い出しました。本作品の“笑い”とはちょっと違いますが、シェイクスピア劇といいモリエール劇といい、笑いはもっともっと在って良いと思うのです。

厳格な表情の下にいつしか笑いがこみ上げてくるのを堪えようとする検閲官・向坂を演じる役所広司さん、こうした役どころはとても上手い。
座付き作者の椿一を演じるSMAPの稲垣さんは、主人公の不器用そうなところはイメージどおりなのですが、迫力の感じられないところがちょっと物足らず。

2003.08.19

   


  

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