“決算!忠臣蔵 ★★
(2019年日本映画)

監督:中村義洋
原作:山本博文(「忠臣蔵の決算書」新潮新書)
脚本:中村義洋
出演:堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、荒川良々、妻夫木聡、西村まさ彦、笹野高史、竹内結子、石原さとみ、阿部サダヲ

 

“忠臣蔵”となればコレ、という恒例の討ち入り場面はなく、そこに至るまでの大石内蔵助(堤真一)の揺れ動く方針、そして主として金の苦労、すったもんだを描いた痛快時代劇。
大石内蔵助と勘定方・矢頭長助の悪戦苦闘を、大石が実際に遺したという詳細な会計帳簿を基に描きだした由です。

番方(武闘派)はとかく籠城、討ち入り、と威勢のいいことばかりで言い募り、金=費用のことなどまるで考えず、パッパパッパと使うばかり。
勘定方は、お家再興を願うにも討ち入りを決行するにも、先立つものは資金、金がなくては何もできずと、残余金の支出に目を光らせます。

まぁどちらが正しいかといえば、当然ながら後者。
しかし、後者は後方支援側で、要は大石内蔵助が方針を固めねば無駄に金が垂れ流しになるばかり。
生活資金の面倒、やたら江戸と京を行き来しての旅費支出と、本作で印象的に描かれるのは、番方連中の金銭感覚の欠如ぶり。
ようやく資金管理の重要さに目覚めた大石内蔵助が、無駄な出費に顔を顰めるところ、能天気に盛り上がっている一同との対比が可笑しい。
なお、武家社会とはいえ、家老職あたりになると金銭感覚もそれなりにあったのではないかと思いますが。
そうでなくては藩財政の切り回しなどできようがありませんし。

“忠臣蔵”でお馴染みの頼りがいある大石内蔵助と異なり、あっちへふらふら、こっちへふらふら、そのくせ郭遊びにだけは一生懸命という内蔵助像を、堤真一が(多分)楽しそうに演じています。
また、浅野内匠頭正室<瑶泉院>を演じる石原さとみの、キレぶりの見事さに思わず喝采。

討ち入りを見れないのは残念ですが、濱田岳等々、個性的な役者が勢ぞろいして現実と迷走の対比をコミカルに演じていて、たっぷり楽しめます。

2019.11.25

         


   

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