“武士の家計簿” ★★☆
(2010年日本映画)

監督:森田芳光
脚本:柏田道夫
原作:磯田道史
出演:
堺雅人、仲間由紀恵、中村雅俊、松坂慶子、西村雅彦、草笛光子、

  

古書店で発見された幕末の、ある下級武士の一家の詳細な家計簿(入拂帳)が元になった時代もの映画。

加賀藩の猪山家は、代々算盤と書をもって藩に仕えてきた御算用者の家柄。毎日登城すると、一日中算用部屋で算盤をはじくという役目。
そんな猪山家の第8代目となるのが、主人公の猪山直之。
父親に並んで出仕し、妻を娶り、子を育て、家を守るという、平凡な下級武士の人生が描かれていきます。

予告をみていた限りでは、つつましく倹約しながら生きる武士一家の暮らしの様子という感じでしたが、どうしてどうして。本作品、かなりの観応え。
見どころは、いつの間にか借金が増えていて家計破綻直前という一家の財政状況を主人公が気付いてからの、家計立て直しに挑むその様子です。
それが、猪山家が日々家計簿をつけることになったきっかけ、という次第。

しかし、注目したいのはその底にある主人公の人物像です。
「算盤ばか」と評判をとる一方で、周囲にみっともないとか、武士なのに、という体裁などお構いなしに行動するその勇気、決断力、実行力の持ち主。
時代の変化に対する先見の明がもしかするとあったのかもしれません。でもそれより、お家芸である算用の術への矜持、算用の術が世の中の役に立っているという自信、にこそ胸を打たれます。

主人公の猪山直之を演じる堺雅人が、「ゴールデンスランバー」に引き続き好演。
従来の時代物映画とは全く趣きを異にする一作。お薦めです。

2010.12.05

         


  

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