サミュエル・ピープス著作のページ


Samuel Pepys  1633-1703 イギリス生、54年ケンブリッジ大学卒。55年15歳のフランス娘エリザベス・サンミシェルと結婚。60年に海軍書記官、後に海軍大臣。
※ 1649年ピューリタン革命勃発、60年王制復古。

   


 

● 「サミュエル・ピープスの日記」● ★★
 
原題:“THE DIARY OF SAMUEL PEPYS”

第1巻・1660年
 
サミュエル・ピープスの日記画像
  
1987年11月
国文社刊
(3200円+税)
 
1988/11/24


「サミュエル・ピープスの日記」のことを知ったのは、ヘレーン・ハンフ「チャリング・クロス街84番地を読んででした。
日記を読んでいくのは退屈な面も多い。けれどもその反面、日常の些細な事柄も書かれていて面白い面もあります。

 
1660年は、クロムウェル革命後王制復古がなされた年であり、当時の状況がよくわかります。
家庭生活においては、妻が、妻が、と言うこと多く、また性生活に関する言及もあるので、興味は尽きません。
一方、当時は洗濯が大変だった様子。ピープスが寝た後、妻と女中が夜遅くまで洗濯をしていたりしています。
本巻でピープスは、殿様の尽力により海軍書記官の職を手に入れます。人の能力より、人脈がものを言った様子です。
 
 


第2巻・1661年

1988年5月
国文社刊
(3200円+税)

1989/11/13

ピープスという人物に親近感が増してきました。でも、格別秀でた人とか、魅力的な人物という思いは特にありません。
今のところ、ごく平凡な、人間らしい人。給料が上がれば喜び、周囲から丁重に扱われれば、自分も偉くなったと喜ぶ。また、立身のための社交辞令は欠かさない。そして、伯父からの遺贈問題には極めて真剣。
この日記の面白さは、後に公表されるなどとは本人が考えもしなかっただけに、自分自身のことを洗いざらい正直に語っている点にあります。
 


第3巻・1662年

国文社刊

 
1991/01/23

第2巻に比べて仕事上の自信がついた様子で、恩人サニッジ卿の評価も高いと自画自賛。女中については すぐ「一戦交えたい」などと言いつつも、妻と女中の折り合いが悪く、女中解雇をめぐって妻と言い合いをしたり しています。
その一方、年末にはきちんと貯蓄を勘定して、増えた額に満足している。
なかなか達者な人物で、日常多岐に渡ることを日記に書いているので楽しめます。それにしても、当時のご馳走は鹿肉のパイだったのでしょうか、度々登場しています。

 


第4巻・1663年

国文社刊

 

1991/11/29

530頁と厚い巻ですが、面白いこともこれまでの巻で一番。
新しく雇った若い女性の召使が、気立て良く、身のこなしも良くてダンスが上手、楽器も上手に演奏すると言って、かなり買いかぶっています。ピープスの個人的関心がありありと判る程。
ところが、妻がダンス教師からダンスを習うようになり、度々ダンス教師が妻の元に出入りするようになると、今度はピープス自身が嫉妬に悩むようになります。仕事が手につかないと日記に嘆いているし、妻の不貞の有無を調べるために、ベッドの乱れ、妻がズロースをはいているかどうか、などを確かめたりしています。
※イギリス女性はズロースをはかないのだが、ピープスの妻はフランス女性だった為ズロースをはく習慣だったとのこと。
女房から嫉妬される程だったかと思えば、一転逆に嫉妬に苦しめられている、第三者の立場からすればお互い様というところなのですが、それをありのままに日記に逐次書いているところが、ピープスという人間の、またこの日記の面白さです。
 


第5巻・1664年

1989年12月
国文社刊
(5150円+税)

 

1992/01/19

この巻は、浮気相手の女性たちのことが多く書かれています。
仕事は極めて順調、貯蓄も充分増えている。それだけに欲求が、SEXの方に向かうのかもしれません。多情でせっかち、行動的な性格が窺えます。
レイン嬢には良い加減飽きてきた様子。ホーリーと結婚するよう勧めたのにもかかわらずそれに従わない、おまけにすぐ妊娠したので、最早相手にしていません。一方、床屋の女中ジェインを積極的に連れ出したりしていますが、 結構袖にされています。
大工
ボグウェルの女房とは、亭主の家で亭主を追い出してまで戯れようとしてるのですから、かなり行動もエスカレートしています。これでは、早晩妻のエリザベスにバレて、派手な喧嘩が起きるのは間違いなし というところ。
ボグウェルの女房としては、亭主への仕事の斡旋が目当てなわけで、当時の下層階級の女達にとって、職の為にある程度旦那衆の戯れに応じるということは、自然なことだったのかもしれません。
 


第6巻・1665年

国文社刊

 
1992/12/13

この巻は、ペストの流行による心配が全体を占めていて、 それ以外に大した事件はありません。相続争いも一段落した様子ですし、女中達との浮気騒動も余り大きな展開は ありません。
海軍での仕事では着実に信頼を勝ち得ており、地位を固めている様子。
それ程面白いという巻ではありませんでした。
 


第7巻・1666年

国文社刊

 
1993/10/24

相変わらず、ピープスは女性関係にマメです。女優の ネップ夫人、海軍差配人の娘・ ツッカー嬢
更にウェストミンスター会館の
レイン嬢が登場。彼女の姉のマーティン夫人(海軍パーサーの妻)もまたピープスの愛人というから、呆れかえります。
5月に妻と大喧嘩、9月にはロンドン大火発生。これが契機となって火災保険が誕生したようです。12月31日には毎年恒例の如く貯蓄を勘定し、増加していることに満足して一年を終えています。

   

 
 

副読本:臼田昭 「ピープス氏の秘められた日記」 岩波新書

  


 

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