モリー・グプティル・マニング著作のページ


Molly Guptill Manning  米国ニューヨーク州ラッサムで育つ。ニューヨーク州立大学オルバニー校で米国史を学んだ後、2002年イェシーヴァー大学ベンジャミン・N・カードーゾ・ロースクールに入学。その後、第二巡回区連邦控訴裁判所で弁護士を務める。

 


 

「戦地の図書館−海を越えた一億四千万冊− ★★☆    訳:松尾恭子
 
原題:"WHEN BOOKS WENT TO WAR:The Stories that Helped Us Win World WarU"


戦地の図書館

2014年発表

2016年05月
東京創元社刊
(2500円+税)



2016/06/22



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ナチス・ドイツが行った非道な振る舞い、その代表的な歴史的事実がユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)であることは言うまでもありませんが、焚書等で1億冊余りの本を葬り去っていた(ビブリオコースト)とは、私が全く認識していなかったこと。
目的はナチスの思想に合わない書物の抹殺ということだったそうですが、つまりは思想統制、ナチスの狂気さには改めて恐ろしさを感じざるを得ません。

そんなナチスの行動に対して米国がとった行動とは、米軍兵士に大量の本を提供すること。
アメリカ図書館協会は
“戦勝図書運動”を広め、米国中から本の寄付を募り前線の兵士へと送り届ける。また、戦時図書審議会はハードカバーより軽く持ち運びしやすい“兵隊文庫”を出版し、無償で兵士たちに提供。
私自身も事ある毎、傍らに本があることによってどれだけ慰められ勇気づけられてきたかを承知しているつもりですが、本書に記されている事実には驚かされます。
本の提供によって、前線にある兵士たちの士気をどれだけ高め、また生死の恐怖に直面する兵士たちどれだけ慰めたことか。
片や日本の陸海軍、こうした発想などまるで持たなかったのでしょうね(日本軍だけでなく、英国軍でも同様だったらしい)。
さらに、戦争終結後に復員した兵士たちへの影響、兵隊文庫が米国出版業界にもたらした影響まで考えると、この運動が余り知られていなかったことが信じられないくらいです。

本の持つ底知れない力、その素晴らしさを改めて感じさせてくれる貴重な記録と言うべき本書には、感動が尽きません。
こうして短い文章で語ってしまうと何の説得力もありません。つぶさにその事実を知ってもらうには、本書を読んでもらうことが最善のこと。 是非、お薦め!


1.蘇る不死鳥/2.八十五ドルの服はあれど、パジャマはなし/3.雪崩れ込む書籍/4.思想戦における新たな武器/5.一冊掴め、ジョー。そして前へ進め/6.根性、意気、大きな勇気/7.砂漠に降る雨/8.検閲とフランクリン・デラノ・ルーズヴェルトの四期目/9.ドイツの降伏と神に見捨てられた島々/10.平和の訪れ/11.平均点を上げる忌々しい奴ら

   


   

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