| インド料理はいかにして世界に伝わったのか。 それを歴史的・経済的な面から史実を詳細に語った一冊。
 カレーライスとラーメンは日本の国民食といっても間違いような人気メニューでしょう。その種類や味や値段はまさにピンからキリまであり、会社の食堂のメニューになかったら不思議に思うくらい。そして、両方とも私の好きなメニューでもあります。
 そのカレーの歴史を詳細に辿った一冊なのですから、興味深くかつ面白くない訳がない。・・・の筈なのですが、そうならなかったのは我ながら情けないくらい。
 総頁数   
        300余、各ページには文字ギッシリという大部な書。
 集中して読むのが欠かせない本ですが、何故か集中できなかった(集中しにくい情況もいろいろあったのですが)。
 とにかく多くの人々、多くの人物、多くの料理が出てくる本なのですが、それがどういうものか実感できなかった、ということも大きかったように思います。
 それでも本書から学んだことは幾つかあります。まず、今我々がインド料理として認識しているのは、本来インドの郷土料理ではなく、15世紀中央アジアから侵攻してインドを支配したムガール帝国の皇帝たちによって持ち込まれたものであること。
 そして、いわゆる“カレー”なる料理がインド国内、さらに英国に伝わったのは、英国人による東インド会社のなせる業であったこと。インドに駐在した英国人と現地女性たちとの子供たち(アングロ・インディアンと呼ばれる)、彼らの間でカレー料理は流行り英国に持ち帰られた。茶も英国人によってインドに持ち込まれたもので、紅茶、チャイの流行も東インド会社の存在を抜きにしては語れません。
 そしてまた、アングロ・インディアンたちによって英国に連れ帰られたインドの人々によって、インド料理は英国の下層階級にも広がる。
 カレーの歴史を追うことは即ちインドの歴史を追うことであり、料理とは歴史と密接に結びついたものであることを、改めてつくづく感じました。
 そして、もうひとつ。カレー料理は今や世界中に広まっていますが、それはカレー自体の美味しさ、魅力が抜群であることに他ならない。
 今や日本でも、カレーライスのない世界なんて考えられないのですから。
 チキンティッカ・マサラ(本場のインド料理を求めて)/ビリヤーニー(ムガル帝国の皇帝たち)/ヴィンダルー(ポルトガル人と唐辛子)/コルマ(東インド会社の商人と寺院、ラクナウの太守)/マドラス・カレー(イギリス人によるカレーの発明)/カレー粉(インドをイギリスにもちかえって)/コールドミート・カツレツ(インドにおけるイギリス食品)/チャイ(紅茶大作戦)/カレーとフライドポテト(シルヘットの船乗りとインドのテイクアウト)/カレーは世界を巡る
         
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