結城真一郎
作品のページ


1991年神奈川県生、東京大学法学部卒。2018年「名もなき星の哀歌」にて第5回新潮ミステリー大賞を受賞し、同作にて作家デビュー。


1.名もなき星の哀歌

2.プロジェクト・インソムニア

3.#真相をお話しします 

  


       

1.

「名もなき星の哀歌 ★☆     新潮ミステリー大賞


名もなき星の哀歌

2019年01月
新潮社

(1600円+税)

2021年10月
新潮文庫



2019/02/10



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人の持つ記憶の一部を買い取り、また売却するというファンタジーな設定を鍵としたミステリ。

主人公としては大学3年の時に知り合い、今もつるんでいる2人の若者。一人は銀行員となった
岸良平。もう一人は漫画家志望だが未だデビューを果たせないでいる田中健太
2人は、記憶の売買を商う
「店」で裏稼業として働く。
そんな2人が気になり、その秘密を明らかにしようとターゲットにしたのは、神出鬼没のシンガーソングライター=
星名
「星名」=
保科ひとみ。彼女はどうやって活動資金を調達したのか。そこに何らかの秘密があるのではないか、というのが2人の抱いた謎。
そして、彼女の歌活動、そして代表曲<スターダスト・ナイト>は、姿を消した幼馴染み
“ナイト”を探すためと判ります。

目次構成は、本ストーリィ5章の間に
「記憶其の〇」が8篇挿入されています。
その意味が最初は判らなかったのですが、読み進むと判ってきます。
ミステリとしてはどうなのかな、と思う処ですが、ストーリィが終わった後での2人の再会を期待させる、そこは楽しい。
本作の真髄がファンタジーらしい夢にあるからだろうと感じた次第です。


記憶其の一 ある虫捕り少年/記憶其の二 ある浴衣姿の少女/第1章 裏裏稼業/記憶其の三 ある引きこもりの青年/記憶其の四 あるカフェ店員の娘/第2章 記憶の欠片を集めて/記憶其の五 ある不良少年/第3章 スターダスト・ナイト/記憶其の六 ある漫画家志望の男/第4章 反撃の一手/第5章 ナイトの誤算/記憶其の七 ある忘れ去られた少年/エピローグ/記憶其の八 ある夢見る少女

     

2.

「プロジェクト・インソムニア ★☆


プロジェクト・インソムニア

2020年07月
新潮社

(1650円+税)

2023年02月
新潮文庫



2020/08/10



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主人公の蝶野恭平・26歳は睡眠障害の一種であるナルコレプシー(通称:居眠り病)に苦しみ、会社を退職、失業中。
その蝶野に、夢を科学するベンチャー企業<
ソムニウム社>の極秘プロジェクト(人体実験)に参加しないかと声を掛けてきたのは、かつての水泳仲間で今は同社の社員である蜂谷
その極秘
“プロジェクト・インソムニア”とは、7名の人物が90日間、夢の世界で毎晩生活を共にする(頭にチップを入れ、脳波データをサーバー上で同期)というもの。

プロジェクトに参加したのは、年代、職業とも様々な男女。
その夢の中で発生したのは、何と殺人事件。
しかも、夢の中だけで終わる筈が、現実生活の中でも死に至っている。一体何が起きているのか。そして犯人は誰なのか?

現実と夢の世界を股にかけるという、新趣向のミステリ。
一体何がどう繋がっているのか、絡んでいるのか。プロジェクトに参加した人物たちの本性を明らかにしていく展開も含め、読み手においてもかなり頭を使わせられるストーリィです。

斬新な面白味があると言えばあるのですが、何のための事件だったのか、もうひとつ理解できなかったという、釈然としない思いが残ります。


よく見る夢1/プロローグ/1.プロジェクト・インソムニア/よく見る夢2/2.落日の夢想郷/よく見る夢3/3.生存者と首謀者/4.悪魔の終点/エピローグ/よく見る夢4

        

3.

「#真相をお話しします ★☆   


#真相をお話しします

2022年06月
新潮社

(1550円+税)



2022/07/19



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ミステリ、いや事件ものサスペンス、5篇。

5篇とも相当に企みを仕込んだストーリィばかり。
とくに冒頭の
「惨者面談」「三角奸計」は、気づけば何時の間にか主人公が事件の渦中に嵌っているという展開。
スリリングを超えて、何という臨場感みなぎる怖さでしょう。思わず震えあがってしまう、という感じ。

この臨場感が堪りません。本書の面白さの理由、と言って過言ではありません。
なお、私としては「惨者面談」が気に入りました。

一方、
「ヤリモク」「パンドラ」は、上記2篇と対照的に、最後に主人公たちが唖然とさせられてしまう、そこがミソ。
そしてまた、上記2篇のような主人公への同情心は起きもしないとあって、作者に意表を突かれたという感触が残ります。

最後の
「#拡散希望」は、小さな島に暮らす小学生4人という子どもたちが主役であるだけに、胸が痛みます。

※本書を読んで、久しぶりに映画
トゥルーマン・ショーを思い出しました。

惨者面談/ヤリモク/パンドラ/三角奸計/#拡散希望

   


  

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