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1.マリモ 3.声だけが耳に残る 4.ためらいもイエス |
●「マリモ−酒漬けOL物語−」● ★★ |
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2005年03月
2005/03/21 |
題名とその副題からして、コミカルなOL物語と想像しがちですが、とんでもない、相当に切ないストーリィなのです。 本書は山崎さんの処女作であると同時に、その後の「さよなら、スナフキン」「声だけが耳に残る」にも繋がっていく作品です。 主人公は食品会社に勤めるOL、大山田マリモ。 荒削りな印象を受けますが、若い女性のもがき苦しむ胸の内を余さず描いた小説として、注目に値する作品。 第一部・彼の見た空/第二部・先生とわたし |
●「さよなら、スナフキン」● ★★ |
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2006年05月
2003/09/14 |
自分の居場所を、自分の価値を見出せないでいる、実質3浪の女子大生、大瀬崎亜紀・22歳が主人公。 アパートに引篭りとなりそうなところを奮い立たせ、バイトを探そうとする向上心まではなんとかある。しかし、頭が悪いうえに要領まで悪く、そのうえ社会常識も欠けている亜紀は、読者でさえさじを投げたくなる主人公です。 そんな亜紀が見つけたバイト先は、独立して間もないPC系の編集プロダクション。そのシャチョーは29歳の、自信家。 亜紀が望んでいたのは、自分より広い世界を知っていて、自分の才能を見つけてくれる“すなふきん”のような存在。 馬鹿にされつつ、便利に、都合よく使いまくられても、亜紀は忠義よろしく、会社に泊まりこんでまで、給料を約半分に落とされても、全身全霊でシャチョーの期待に応えようとします。 そんな亜紀が、自分の身の丈にあった生活をすれば良いんだと、漸く自覚するまでを描くストーリィ。 幾度も亜紀に呆れつつ、阿呆らしくなりながらも、懸命に頑張ろうとする亜紀の姿は、現代社会において他人事ではないのかもしれません。 |
●「声だけが耳に残る」● ★★ |
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2004/07/31 |
本書の主人公は椎貝加奈子、26歳、無職。 かつて恋愛ゲームの脚本を書いて脚光を浴びたが、ゲーム会社に利用され、使い捨てられた以後、無気力のままその日暮らしをしている。 冒頭、加奈子が調教(SMプレイ)される場面から始まるので、そこまで落ちたのかと思うと、世間に相容れない自分を忘れていられる分、ホッと息つく時間であるらしい。 能天気なのか、それとも底の底まで落ちて開き直ってしまったのか、というのがこの主人公。 調教されたり、レイプされたりしても、どこかあっけらかんと自分自身を眺めている。自分をワシ、ワシと言い、イデーっとか。色気どころか、まるで女っ気がない。調教のご主人様とのやり取りだけでなく、主人公の言葉には笑ってしまうことが多い。椎貝は、ことさらに自分を貶めようとしているのか。 そんな彼女は、精神的な傷を負った人達のサークルに出て、自分の無気力の原因が“AC”という症状だと知らされる。そして、同じように社会不適応者である青年と友達になる。 細部はすっとばしても、どんどん先を読みたい小説がありますけれど、本書はそんな小説のひとつ。 |
●「ためらいもイエス」● ★★☆ |
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2007年12月
2005/04/02
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とにかく面白くて、読み出したらすぐ止まらなくなりました。 本書の主人公・三田村奈津美、好きだなぁ。大好きです。 こんな風に感じること、そうはありません。
これまでの山崎作品の主人公は、生きることにどこかシンドサを抱えた女性ばかりでしたが、本書の奈津美はちょっと違う。 主人公・三田村奈津美は、特許翻訳の仕事一筋に生きる地味なワーキングガール・28歳。恋愛には縁がないと思い込んでいるところがあり、恋愛経験なし、未だバージン。 いいですよぉ、この主人公。是非好きになってください。 |
●「盆栽マイフェアレディ」● ★ |
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2008/08/24
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つい先輩の松本に誘われて繭子が足を踏み入れてしまったのは、盆栽職人の道。しかしこの道、即ち貧乏ということでもある。 そんな繭子の前に現れたのは高野という、やたら金持ちの男性。繭子に誘いをかけてくる高野につい好意を感じたら、あれよあれよという間に繭子は愛人道を励むことに。 平日は貧乏な盆栽職人を続けながら、休日は高野の傍でゴージャスな美女に変身。 しかし、そんな相反する二重生活をいつまでも続けられる訳もなく、やがて繭子はどちらの道を歩むのか、選択を迫られることになります。 果たして繭子は、貧乏な盆栽職人の道を目指すのか、それとも愛人道を極めるのか。 繭子の本心が金銭目的ではなく、ただ高野を喜ばそうと健気に振る舞っているだけと判っていても、結果的に金に釣られるようにして愛人道に励んでいる様子はなぁ〜、心持ち良くないんですよ。 なお、繭子の先輩で同じ盆栽職人である松本慎一。単に頭が固いだけの男と思っていたのですが、実は芯が通っていてなかなかいいじゃないですか。彼の人物像の変化も楽しめるところ。 |