山内令南
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1958年岐阜県生、岐阜大学医療技術短期大学部看護学科卒。2011年「癌だましい」にて 第112回文学界新人賞を受賞。受賞第一作「癌ふるい」を脱稿後、05月19日に食道癌のため死去。

 


           

「癌だましい」● ★★☆          文学界新人賞


癌だましい画像

2011年08月
文芸春秋刊
(1143円+税)

2014年02月
文春文庫化

  

2011/08/28

  

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子供の頃からたっぷり食べることに執念を燃やしてきた女性、錦田麻美45歳。
勤務先の老人ホームで同僚から、職場の癌、病気知らずの恥知らず、と言われても何ら意に介さず。たっぷり食べて満足さえできていれば。
そんな彼女が初めて宣告された病気が、末期の食道癌とは。
食道が癌でふさがれ最早食べ物を嚥下することができず、84キロあった体重も今やその半分。そんな状況であっても、食べることへの執念を燃やし続けて止まず。
親兄弟はもう皆死去していて、ゴミ溜めのようになった古い一軒家でたった一人、今も生を繋いでいる。その姿はもう、凄絶としか言いようがありません。
まして作者の山内令南さん自身、食道癌を発病して文学界新人賞を受賞して間もなく死去されたというのですから、なおさらのこと。フィクションである麻美のこと、ノンフィクションである山内さん自身のこと、両方を意識しながら読まざるを得ない作品です。
そして、ただただ、圧倒されるばかり。

受賞第一作となった「癌ふるい」は、40代半ばの独身女性=米山千波が末期の食道癌を宣告された事実をメールで知人宛てに報告し、その相手からの様々な返信メールを採点付きで列挙したという形式の作品。
こんな連絡をもらったらどう返信すれば良いのか、誰しも迷うと思うのですが、それにしても相手からの返信文は様々、またそれへの千波の採点も様々。

両作品から伝わってくるのは、末期癌だからといって、三大治療を拒否したからといって、決して生きることを諦めた訳ではないということ。そうした強い思いがひしひしと伝わってきます。
それは作者の山内さん自身の思いであったことでしょう。
そんな山内さんの思いを受け止めるためにも、是非読んでいただきたい一冊です。
 山内さんのご冥福を謹んで祈ります。

癌だましい/癌ふるい

                 


   

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