山田 健
(たけし)作品のページ


1955年生、東京大学文学部卒。同年サントリー宣伝部にコピーライターとして入社。ワイン・ウィスキー、音楽、環境などの広告コピーを制作。現在同社環境活動部部長シニアスペシャリストとして「天然水の森」活動を推進中。

  


    

●「ゴチソウ山」● ★★


ゴチソウ山画像j

2009年10月
角川春樹事務所刊
(1600円+税)

     

2009/12/04

 

amazon.co.jp

蛍川温泉の旅館の主人=高橋は、突然起きた激しい地鳴りと震動に飛び起きる。
何と旅館から僅か10mの処で道路が崩落し、20m下の温泉街では10数軒の商家が崖崩れの下敷きになっていた。
てっきり地震と思ったらそうではなく、大手不動産会社がリゾートマンションを建てるために買い取った土地が伐採放置されていたために、台風で地盤が緩み一気に崩落したのだという。
さっそく被害者同盟を作って不動産会社に賠償請求しようと、大学教授に調査を依頼したところ、今回の崖崩れどころか、山の手入れをしていないためにあちこちいつ地盤が崩れても不思議はないという、深刻な事実が判明する。
さて、どうするか。
単なる事故防止だけでは弾みはつかない。いっそ、事故防止策を発展させて蛍川温泉の名物作り、さらに地元再生に繋げようと、“里山再生・竹林有効利用”の旗を掲げて、地元の有志メンバーと大学教授が走り出す、というストーリィ。

本書、手入れをしないと山はどんなに危険か、将来に禍根を残すことになるのかを警告し、さらに工夫次第でそれをどれだけ地元の魅力作りに活かせるかというアイデアを次々と披露してみせたという、里山活性化プロジェクトサンプルの提示。
それをただ論説風に説くのではなく、小説スタイルで語ったというのが真の姿。
したがって小説としての面白さは今一つですが、警告に震え上がると同時に、活性化アイデアに楽しさと希望があって、実に楽しい。

民主党政権の公約に農家への個別補償というのがありましたが、そんな付け焼刃的な対策ではなく、こうした根本的な活性化策が必要、それこそやって欲しいことなんだ、と改めて思います。
本書で実行された再生プランは、実際そう簡単にいくものではないと思いますが、こんな風に実現したらさぞ楽しい我が町になることでしょう。何といっても前向き、夢をもつことが大事。

 


  

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