八木詠美(えみ)作品のページ


1988年長野県生、早稲田大学文化構想学部卒。2020年「空芯手帳」にて第36回太宰治賞を受賞。2020年現在会社員、東京都在住。

 


                   

「空芯手帳(くうしん) ★★☆        太宰治賞




2020年10月
筑摩書房

(1400円+税)



2021/02/14



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予想を超えた面白さ! 太宰治賞受賞作。

主人公は、紙管専門メーカーで生産管理の仕事をしている34歳の独身女性=
柴田
女性だからあたかも当然という具合に、様々な雑用を押し付けられるのについイラッとした柴田、つい妊娠中と言ってしまう。
本作は、その「妊娠5週目」から始まる、妊婦?日記。

妊娠中と宣言したことによって周囲の男性社員たちの姿勢が変わっていく様子等々、妊婦と自称したところから、主人公が客観的に視点を手に入れ周囲を観察する風になっていく点が面白い。
淡々と綴っていく語り口に、さりげないユーモアが篭められているところが魅力。

ただユニーク、ユーモラスというだけでなく、思わず考えさせられてしまう問題も提起されています。
女性社員の扱い、妊婦となった女性社員への対応、同僚間での仕事の協力、妊婦・子育ての苦労、等々。
妊婦だからといって過剰反応をすべきではありませんが、論理的に必要な配慮はすべき、という処でしょうか。

幸い主人公が勤めるこの会社、鈍感ではありましたけれど、頑迷ではなかったようです。主人公が産休から復帰すると、いろいろ変化が明らかだったそうですから。

でも、主人公、本当に妊娠は虚偽、本当に出産はしなかったの?と思わせるところがあって、その点がぼかされている故に、面白さが二割増し。
まぁ、社会の現状が妊婦という視点から浮き彫りにされた点に妙味ありですから、実際に妊娠していたかどうかはもはや大したことではない、というものでしょう。

        


   

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