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1.月ぬ走いや、馬ぬ走い 2.はくしむるち |
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「月ぬ走いや、馬ぬ走い(チチヌハイヤ、ウンマヌハイ)」 ★★ 群像新人文学賞 |
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沖縄の現在と、戦中〜戦後の苦難に満ちた過去を、語りをもって描く逸品。 お盆の中日、海に出かけた小学生男子と女子の前に日本兵の幽霊が海から現れ、戦争末期の沖縄を語る。 一方、戦争孤児となり米国兵の戦争花嫁となった祖母が当時を、その孫息子が現在の沖縄の出来事を語る。 それらは整然と語られるのではなく、過去と現在が交錯し混然一体となって語られ、さらに地元の言葉も入り交じり、ワイワイガヤガヤとした空気が充満している、という風。 それだけに日本本土と米国の間に挟まれ、苦渋の歴史を歩んだ沖縄という地の悲しみ、傷がリアルに感じられるようです。 なお、表題の「月ぬ走いや、馬ぬ走い」、どう読むのか、またその意味も分かりませんでしたが、すべて光陰の如く過ぎ去っていく、苦楽も馬さながらに歳月を駆け抜けてしまう、という意味らしい。 しかし、たとえ忘れることはできても、あった事実までを消し去ることはできません。 ズンと胸に響く一冊、お薦めです。 |
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「はくしむるち」 ★★☆ |
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主人公は沖縄の高校生、ユッキーこと中村行生(ゆきお)。 幼い頃からの“ヒーローオタク”で、小中時は執拗なイジメを受けていた。当時その行生を庇ってくれたのは、不良グループとも親しい漆間瑞人。 しかし、高校生になるとその友人関係にも変化が生じます。 その行生の大伯父が修仁(しゅうじ)。沖縄戦争で戦死した親友の仇名を店名にした喫茶店「赤インコ」を営んでいる。 行生たちが生きる現在と、修仁たちが生きた戦時中〜戦後という80年前を、並行的に描いた作品。 一見無軌道な、行生や瑞人ら、沖縄に暮らす若者たちの青春風景を描いた作品かと思ったのですが、終盤に至り、彼らの同級生である桑江円鹿らへの暴力が炸裂することによって、ストーリーの光景は一転してしまいます。 そこに浮かび上がってきたのは、過去、そして現在まで、沖縄、沖縄の人々が如何に暴力に晒され続けてきたのか、という問題です。 琉球国が日本に組み入れられ、戦時下では本土の軍人たちから犠牲にされ、戦後の米国占領下では自尊心を踏みにじられる等々、そして本土復帰後の今も本土のため犠牲にされ続けている、という実相。 その怒り、哀しみ、苦しみが一気に迸り、押し寄せてくる気がして、胸が詰まり、痛む思いがします。 本作は、行生を「きみ」と呼び、二人称で語られていますが、その記述方法が、彼らの気持ちを見事に浮かび上がらせているように感じます。 沖縄語が数多く使われていることも合わせて、効果的。 沖縄の若者たちを描いた鮮烈な青春小説、是非お薦めです。 |