多崎 礼作品のページ


2006年「煌夜祭」にて第2回C★NOVELS大賞を受賞し作家デビュー。


1.<本の姫>は謳う1 

2.
レーデンデ国物語

3.レーエンデ国物語−月と太陽− 

4.レーエンデ国物語−喝采か沈黙か− 

  


   

1.

「<本の姫>は謳う1 ★☆   


<本の姫>は謳う1

2007年10月
中央公論新社

(900円+税)

2024年01月
講談社
(新装版)


2024/02/08


amazon.co.jp

2007年から2008年にかけてノベルス全4巻で刊行されたシリーズ本、今回講談社から新装版が刊行されたのを機に、読んでみた次第です。
“本”を題材にされてしまうと、なんとなく手を出さずにはいられないというか、本好きの性分故です。

2つの月が浮かぶ異世界=ソリディアス大陸。
銀髪、隻眼の少年=
アンガスは、本に宿った女性<本の姫>と共に、大陸に散った邪悪な文字(スペル)を回収するための旅を続けている。
その目的は、文字の魔力によって人々が凶悪になり、ひいては世界が滅亡してしまうことを防ぐため。

ファンタジー・ストーリィですから、この異世界を舞台に、不思議な出会い、不思議な出来事との遭遇もあれば、凶悪な者たちとの対決もあります。
その中で魅力なのは、やはりアンガスと<本の姫>のコンビ関係にあると言えます。
その一方、文字(スペル)という存在が一人歩きしていて、どうも理解が追いつきません。
ともあれ、理解できずとも、ストーリィを追っていければファンタジー物語としては充分なのかもしれません。

アンガス、そして<本の姫>の秘密は、次巻以降で明らかになっていくのでしょう。
今後の巻を引き続き読んでいくかどうかは、読書スケジュール考え合わせ、ゆっくり考えていこうと思っています。

       

2.

「レーエンデ国物語 The Chronicles of Leende ★★   


レーエンデ国物語

2023年06月
講談社

(1950円+税)



2023/09/12



amazon.co.jp

見落としていたのですが、かなり話題となっている作品らしいので、読んでみた次第です。

全5巻となる、壮大な和製ファンタジー年代記。
私としては、
高田大介「図書館の魔女以来のファンタジー物語です。

かつて聖ライヒ・イジョルニが戦乱の世を平定し、西ディコンセ大陸に建国した
<聖イジョルニ帝国>が本物語の舞台。
現在、皇帝は不在、帝国は12州に分割され、それぞれの州を各首長が治めている。法皇が治める法皇領+帝国12州という構成。
その中央に存在するのが、どの州にも属さない
<レーエンデ>。何故ならその地には、身体が次第に銀の鱗に覆われて死す「銀呪病」という風土病をもつ「呪われた土地」だから。

そのレーエンデに足を踏み入れたのは、シュライヴァ州首長の弟で同騎士団の団長であり、英雄としても高名な
ヘクトル・シュライヴァと、その一人娘ユリア
ヘクトルの目的は交易路を新たに建設すること、そしてユリアの目的は首長である伯父が企む政略結婚から逃げるため。
2人はヘクトルの戦友であった
ウル族イスマル・ドゥ・マルティンとその一家に歓迎され、元傭兵で弓の名手であるトリスタン・ドゥ・エルティンの古代樹の家に寄寓しながら、レーエンデに馴染んでいきます。
しかし、領主が何人もいれば、中には必ず野望を抱く人間が出てくるもの。
終盤、突如として起こされた争乱に、レーエンデの多くの民たちが巻き込まれて行きます。
ユリアのレーエンデに対する想い、初めての恋も蹂躙され、ユリアとトリスタンはどういう結末を迎えるのか・・・。

舞台設定にかなりの頁をとられている処がありますので、ストーリィとしては起伏に乏しいという印象も受けますが、全5巻という壮大な年代記における、まだ始まりの巻に過ぎません。
これから先の物語、展開が楽しみです。


序章/1.呪われた土地/2.英雄と弓兵/3.幻の海/4.竜の首/5.夏至祭/6.ティコ族とノイエ族/7.天満月の乙女/8.花と雨/終章

       

3.

「レーエンデ国物語−月と太陽− ★★  
  The Chronicles of Leende The Moon and the Sun 


レーエンデ国物語 月と太陽

2023年08月
講談社

(2300円+税)



2023/10/03



amazon.co.jp

前巻の最後で、レーエンデは法皇領に併合され、自由を失う。
それまで銀呪病という風土病のおかげで敬遠されていたレーエンデから、その恐れがなくなったことが要因の一つ。
一方、
シュライヴァを中心とした北方七州は“北イジョルニ合衆国”として聖イジョルニ帝国からの独立を宣言、帝国は二分されます。
本巻は、そこから 約130年後の物語。

住んでいた邸に火をかけられたうえ両親を殺害されたヴァレッティ家の第二子=
ルチアーノ(7歳,イジョルニ人)は、何故かその犯人によって救い出され、レーエンデのティコ族の村へ行けと追い払われます。
その後、森の中で倒れていたルチアーノは、
ダール村のテッサという怪力少女(14歳)に救われ、ルーチェという名でティコ族ダール村で平穏な5年間を過ごします。
しかし、平穏な生活とは続かないもの。テッサが民兵として帝国軍に従軍していた間に、ダール村を悲惨な運命が襲います。

帝国軍の仕打ちに激しい怒りを覚えたテッサは、仲間たちと帝国打倒、レーエンデに自由を取り戻すための戦いに身を投じます。
テッサ、ルーチェ、仲間たちによるレーエンデのための戦い、それが本巻の主軸。

本物語の舞台設定が前巻で分かっていますので、本巻ではすんなりストーリィに乗ることができました。
ルーチェとテッサの2人が本巻の主役ですが、テッサの颯爽として活躍ぶりが魅力。そして、“レーエンデの英雄”となるべくどんどん大きく成長していくその姿が素晴らしい。

しかし、本巻で革命は未達。革命とはそう簡単に為せるものではない、ということでしょうか。
また、神の御子の存在が、ルーチェによってクローズアップされます。

次巻ではどんな展開が繰り広げられるのか。楽しみです。

序章/1.ルーチェ/2.斬り込み中隊/3.もう神なんて信じない/4.落陽/5.隠れ里エルウィン/6.レーエンデ解放軍/7.春陽亭の三姉妹/8.初仕事/9.協力者/10.アルトベリ城攻略/11.軍師の誕生/12.革命の夏/13.もっとも信心深い者にこそ/14.月と太陽/終章

           

4.

「レーエンデ国物語−喝采か沈黙か− ★★  
  The Chronicles of Leende Applause or Silence 


レーエンデ国物語 喝采か沈黙か

2023年10月
講談社

(1900円+税)



2023/11/22



amazon.co.jp

シリーズ3巻目。
舞台は、前巻での
テッサ・ダールの死から 約100年後。
前巻で住処だった古代樹の森を焼かれ、テッサを見棄てたと第2代法皇帝ルチアーノの怒りをかった
ウル族は、最下層に位置づけられ、貧困にあえぐ余り我が子を奴隷、あるいは娼館に売って凌ぐといった状況下にあります。

本巻の主人公である
アーロウ・ランベールは、そうした娼館で生まれ育った双子の弟。娼館の男娼であると同時に、娼館に併設された劇場の俳優であり、座長という存在。
一方、双子の兄である
リーアンは、一人で娼館を出ていき、今や才能溢れる劇作家という評判を勝ち得た存在。。
自分には何の取柄もないから、リーアンは弟の自分を娼館に置き捨てていったのだという挫折感をアーロウは抱えている。

その兄リーアンが突然、レーエンデ人の心を奮い立たせたいと、レーエンデの英雄テッサ・ダールの事跡を題材にして新作を書くと明言。
イジョルニ人からの迫害をアーロウは恐れますが、法皇庁によって抹殺されたテッサの事跡を調べるため、2人は彼に関係ある処へと旅立ちます。

前巻は武器を取っての闘いでしたが、本巻は文化、芸術をもっての闘いと言えるでしょう。
前巻とは全く異なる趣向に、新鮮な面白さを感じます。
もっとも、前巻でのテッサの闘いがあってこそ、本巻での闘いがある、テッサの闘いは今に続いている、その死は決して無駄ではなかった、と感じ取れるストーリィになっています。
※なお、2人の周囲にいる女性たち、ちょっと出来過ぎかも。

全5巻の折り返し地点。本巻での2人の闘いが、次巻へどう繋がっていくか。次巻が楽しみです。


序章/1.歪んだ鏡像/2.ミケーレ・シュティーレの依頼/3.テッサを探して/4.赤い頭/5.知られざる者/6.憐憫と懊悩/7.天才と凡人/8.喝采か沈黙か/終章
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
開幕/第一幕〜第七幕/閉幕
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【付録】第一部掌編「それだけでいい」/第二部掌編「カボチャの早割り女王」

       


  

to Top Page     to 国内作家 Index