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1.山の上のランチタイム 2.山のふもとのブレイクタイム |
「山の上のランチタイム Lunchtime on the Moutain」 ★★ | |
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風光明媚な土地にあるレストランを舞台にした連作ストーリィ。最近はそうした設定の作品が多くなったなぁと思います。 その魅力は、爽やかさと美味しそうな料理にある、というのはもはや定番と言って良いでしょう。 本書の舞台となるのは青森県南部にある葵岳、そのふもとにあるレストラン“コッヘル デル モタキッラ(セキレイの調理器具)”、通称:葵レストラン。 スタッフはイケメン店長の明智登麿・25歳、その甥で不登校中の中二・明智瑛太、そして主人公である青木美玖・20歳の3人。 この主人公がかなり賑わしい。そそっかしくて不器用で、やたら元気。元柔道部。とはいえ、料理に対する味覚への信頼度は高いらしい。 ただ、11年前に家族3人で葵岳登山をしたその帰り、目の前で母親が転落死するという辛い過去を背負っている。いつも美玖が振りまく笑顔に、どこか無理しているところはないのだろうか。 各章、親子の繋がり、理解し合うことの難しさ、気持ちのすれ違いといった内容になっています。 「七歳児参りのふっくらムニエル」は母親を失くした息子と父親の関係、「崖っぷちのオッキ・ディ・ブェ」は不登校中の瑛太の事情、「塩むすびのてっぺんマリアージュ」は葵岳山頂での結婚パーティを望んできた和田蘭が抱えてきた想い、「四十年のミルフィーユ」は余命僅かとなった母親と中年男性の息子の関係、そして「リスタードのトリュフチョコ」は未だ妻の死を抱え込んでいるらしい父親と美玖の対立・・・。 ストーリィの背後にはいつも葵岳があり、美味しそうな料理がストーリィを進める要素になっているところが、爽快。 ちょっと突出気味ではありますが、美玖の健気な快活さに元気づけられるようで、好感。 1.七歳児参りのふっくらムニエル/2.崖っぷちのオッキ・ディ・ブェ/3.塩むすびのてっぺんマリアージュ/4.四十年のミルフィーユ/5.リスタードのトリュフチョコ |
「山のふもとのブレイクタイム」 ★★ Time for a Break at the foot of the mountain |
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青森県南部にある葵岳、そのふもとにあるレストラン“コッヘル デル モタキッラ(セキレイの調理器具)”、通称:葵レストランを舞台にしたストーリィ「山の上のランチタイム」の続編。 自然にあふれた爽快さと如何にも美味しそうな料理、というロケーション&道具立てのところから魅力あった前作、その続編ということであればとても嬉しい。 同じく高原のレストランという設定では、柴田よしき“高原カフェ日誌”も充分魅力的なのですが、本作はシェフの明智登麿も店員の青木美玖も共に20代と若々しいところが魅力。 また、その美玖、単に料理の運び手に留まらず、登麿の作る料理の味にも貢献しているらしいのが、嬉しいところ。 未だいろいろ迷いもし、葛藤もするシェフ・登麿。それに対し、猪突猛進といった具合に迷いなく突進する美玖。この2人に高校生バイトの瑛太が加わってくると、実に良いチームです。 ・「ハーブポークの休息」:瑛太の同級生=早苗。テニスがずっと不調というが、その挙げ句しようとしたことは・・・。 ・「こんがりチーズの焼きおにぎり」:小中の同級生=馬場健が祖母・母親連れで来店。登麿に祖母との思い出を回想させます。 ・「見えないケーキ」:中学時の同級生=工藤陽菜が来店。娘自慢の両親によると、東京の上京企業で活躍中というのだが。 ・「水ぬるむ頃まで」:小学校の同級生で今は地元紙の記者を務める西野が来店。その傍若無人な要求を、何故登麿は受け入れ続けるのか・・・。 登麿と美玖の関係、ちょっと前進でしょうか。次作が楽しみ。 1.青葉の頃−ハーブポークの休息/2.お盆の頃−こんがりチーズの焼きおにぎり/3.もみじの頃−見えないケーキ/4.水ぬるむ頃まで−ホワイトソースと厄介な頼み |