「黄金の庭」 ★☆ すばる文学賞 | |
2013/03/02
|
若い夫婦の青菜と那津男が引っ越してきた黄金町。 世の中にはいろいろなことが起きる。中にはちょっと不思議なこともあるかもしれないが、だからといって自分の生活が変える必要はない。 青菜がこの町で知り合ったのは、ライフコーディネーターを名乗る千ちゃんこと千寿寛治という風変わりな中年男性、その20歳年下の恋人であるダイヤさん、千ちゃんの元恋人だというマサエさん等々、個性的な人々。 |
「ぐるぐる登山」 ★★ | |
|
小学5年生の時に知り合った女子4人、今でも何かあると4人で扁平山に登山している。 学校時代から仲の良い女子4人組という設定はそう珍しいものではありませんが、本書に登場する4人には特殊体質の“顕現”という共通項がある、というのがミソ。 本書紹介文でも「ケンゲン」とあり、何のこっちゃ?と全く想像つかなかったのですが、冒頭で4人各々が持つケンゲンがどんなものか説明されています。 “火の顕現”である莓(まい)は身体の一部が光り、“風の顕現”である井刈は顔が変形し、“水の顕現”である水奈は水に触れると身体が半透明になり揚げ句にはゼリー状になってしまう、“土の顕現”である香音は頭の中に土地があり時々その草が耳の中から飛び出す、といった具合。 何とも奇妙な体質なのですが、5百人に一人位という顕現の持ち主が偶然にも4人揃ったというところが、4人の結び付きを強めたという次第。 と言っても本書、ファンタジー小説でも怪奇小説でも何らなく、20代後半という女性であればごくフツーにありがちなドラマを描いた連作ストーリィ。(敢えて言えば、その体質のために彼女たち、他人等々に対して引け目を感じているところ有り。) ただ、“顕現”という要素があるからこそ、ごくフツーのドラマが何となく面白く感じられるという効果を発揮しています。 特殊体質の4人だからこそ、時に言い合いをすることがあってもお互いに支え合ってきて、応援し合うこともできるし、これからもこの信頼関係が続くだろうという安心感が4人からは感じられます。 人の幸せは、お金や地位ではなく、家族・友人といった人間関係からこそ得られるものだとするならば、彼女たちはとても幸せな人生を送っていると言えるでしょう。 現代における幸福観をユニークかつユーモアを以て描いた一冊。 読み手の好み次第かもしれませんが、私は本作品、好きです。 ぐるぐる登山/まどう風/つまずく火/よみがえる水/みる土/ぐるぐる下山 |