杉山大二郎
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1966年東京都生。従業員1万人超のIT企業において、経営幹部として販売力強化やセールスプロモーションの統括責任者を務めた。独立後は経営コンサルタント。その傍ら小説の執筆を手掛ける。

  


       

「嵐を呼ぶ男! ★★


嵐を呼ぶ男!

2019年11月
徳間書店

(2000円+税)



2020/03/14



amazon.co.jp

新聞書評で面白いと絶賛されていたことから読むに至った作品。
書評とはとかく誇張がちなことも多いのですが、本作は本当に面白い! 読み始めた冒頭からもうその面白さに引きずり込まれ、一気読みでした。
題名の「嵐を呼ぶ男!」とは
織田信長のこと。

思うに、日本の歴史上、小説として描いて一番面白い人物は、やはり織田信長なのではないでしょうか。
日本史上唯一人と言って良い革命児、その人生を疾風の如く駆け抜けた風雲児。
本作で描くのは、
斎藤道三の娘=帰蝶を嫁取りした後から、実弟=勘十郎信行(本作では信勝)を始末する迄ですから、黎明期の信長と言って良いでしょう。

尾張国内を統一して美濃に攻め入る以前、尾張国内で乱立する織田一族内での勢力争いに苦闘していた頃の信長。
それでも人物の設定、印象は、後の信長と変わるところはありません。むしろ、志を立て突進しようともがいている状況にある信長ですから、その言動はむしろ苛烈と言って良い。だから、面白いです。

破落戸のような姿で領地内をうろつき回り、喧嘩に明け暮れるのも、民の苦しむ実情を知り、配下の者達を鍛え、戦術に熟練するため。
そして民に幸せをもたらすためには戦さを無くす、そのためには国の境を無くす=国を統一、そして為すべきは
“天下静謐”
出来ようはずがないと皆が言う中で、声を高くして唱え続ける、その夢にいつか皆が巻き込まれていくという流れ。
本作はこれで完結だと思いますが、その後に続く夢を見てみたいと思わされます。冒頭から最後まで、痛快の一言。


霧島兵庫「信長を生んだ男もお薦めです。

1.飢餓の国/2.煌光の轍/3.天道照覧/4.時刻到来/5.天下布武

   


  

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