“受験”がこんなに面白い小説題材になるとは思いも寄らなかった、というのが読了後第一の感想。
その小林家、夫の雅也は勤めていた商事会社が倒産したために、現在は会計事務所に勤めながら税理士試験に挑戦中。
主人公である主婦の真由美は、銀行でパート勤務をしながら時給アップを狙ってFP試験に挑戦中。
そこに小学生である長男=隆也が親友の受験勉強に刺激を受け、塾に通って一緒に受験勉強したいと言い出す。その反対に、高校受験目前の長女=春菜は遊んでばかり、勉強など端からやる気がない。
長女長男の下には次女の雪菜がいる訳ですが、こちらは未だ傍観者であり応援者。
いずれにせよ、小林家の受検者4人、各人各様なのです。
そして受験費用、私立への進学となると、小林家の財政事情が重くのしかかり、合格すれば良いということにはならない。
隆也の受験勉強顛末がストーリィの中心になるのですが、ゲームより受験勉強の方が刺激的・やり甲斐があるらしく、実に楽しそうなのです。また、隆也が結局通うことになった“勉強道場”、これが実に独創的で面白い。
受験もこんなムードで参加できれば“戦争”ではなく“ゲーム”という言葉に置き換えられそうですが、元々頭も良く努力好きという隆也の性格もある訳で、万人共通とは行かないようです。
その点、合格はしたいけれど地道な努力は大嫌い、何とかなるだろうと楽天的な春菜の方が、一般的なんだろうなァ。
そんな春菜がいるからこそ、本ストーリィが生き生きとして面白い、という次第。
受験、受験というと家の中がギクシャクしそうなものですけれど、この小林家ではかえって家族の絆が深まる、という姿を描き出しているところが好感です。
ちょっと他にないストーリィであるうえに、登場人物のキャラクターも魅力いっぱい。お薦めです。
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