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「九重家献立暦」 ★☆ | |
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複雑な縁になる3人が、旧家の九重家で同居、季節ごとに伝わる九重家の献立をその3人が辿るという、連作ストーリィ。 主人公は、不器用な若い女性=九重茜。 九重家はかつて、江戸店を持つ木綿商の地元豪商。 茜はその大きな家で厳格な祖母=千代子と暮らしてきましたが、その窮屈さから大学進学を機に家を出たという経緯。ところが就活で難航し、伯父=喜夫の勧めに従い、実家に戻って来たという次第。 その千代子、実は大叔母。茜の母である景子(実兄の娘)を跡継ぎとして養女にしたのですが、景子は未婚のまま茜を産み、茜の小学校卒業式の日に同級生と父親と駆け落ち、そのまま音信普通という事情。 実家に戻った茜が驚いたのは、同い年の大学生が居候として住み込んでいて、しかも千代子と親し気にしていること。 卒論の為九重家の年中行事を調べる為というその相手は、何と、茜の母親が駆け落ちした相手の息子である仁木一(はじめ、母親が再婚し現姓は十日市)とは! そこから3人の共同生活が始まるのですが、どう考えても茜と仁木の関係は奇妙ですよね。 それに、千代子〜景子〜茜という3代にわたる女性の関係にも一言では表せない複雑な感情があります。 千代子の指示の元、茜と仁木の2人が、九重家に伝わる家政暦、季節ごとの献立作りに参加します。 そうした繰り返しの日々の中、それぞれが抱えた苦い記憶が漏れ出す、という流れ。 ただ、本書を読んだ限りでは、全てがまだ中途半端なまま、明らかにされるべきことが、明らかになっていないままです。 したがって本作は、シリーズ化されるのでしょう。本書はまたそのプロローグ部分に過ぎない、という印象です。 1.花冷えと菜飯田楽/2.茅の輪と梅干し/3.夏雲に盆汁/4.夜寒の牡蠣味噌汁/5.冬茜とクリームシチュー |